幕間01
私にとって冒険者という人たちは身近な存在であるが、理解しがたい者たちの一つだった。
彼らが存在する意味や、必要とされる理由は理解できるし、共感できる。けれど、進んで自ら危険に踏み込む彼らの考えは理解できなかった。
自分が恵まれている方だからかもしれない。
私は今までに多くの人と関わり、多くの人の生活の一部になってしまっているからだろうか、人一人が命を落とすことでどれだけの人が悲しみ、傷つくかを知っている。
そう、人一人が命を落とすことで多くの人が悲しむのだ。そうであるのに彼らは、死ぬかもしれないと知りながら、危険に身をさらす。
彼らはそのことを理解しているのだろうか? 理解していなが危険に身をさらすのだろうか?
身近な誰かを助けたくて、危険に身を投じることは理解できる。けれど彼らが助けるのは、ほとんどが馴染みのない他人だ。
お金がなく、そういった危険に身をさらさなければ食うに困ると言うなら少しは理解できるかもしれない。けれど、冒険者という仕事をするためには、高価な武器や防具が必要で、食に困るほど貧しい人間では簡単になることは出来ない。
彼らはなぜ見ず知らずの誰かを助けるために、自分の命を危険にさらすのだろうか?
彼らが居るおかげで自分たちは命に係わる危険から守られていることは知っているし、自分たちの身を守るために彼らの存在が必要不可欠なのも理解している。感謝もしている。
けれど、自分が冒険者という存在になって、命がけで見ず知らずの誰かを助けようと考えられるかというと、それは考えられない。
死ぬのは怖いし、自分が死ぬことで親や友人などが悲しむのは想像するだけで嫌だった。
だから、私には彼らが命を危険にさらすようなことを平気で行うことが理解できなかった。
彼らも多くの人と関わり、多くの人の生活の一部になっているだろう。親や友人、恋人もいるだろう。その人たちの心に大きな悲しみを与えるとしても、命を懸けて、見ず知らずの誰かを助けようとする彼ら冒険者が、私には理解できない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます