新米冒険者フィオンⅪ
誓いを捧げた。自分のすべてでもって、どうしようもない理不尽から人々を守ると。
多くの仲間と共に、剣を手に旅に出た。
けれど自分は無力だった。
一つ、また一つと墓標を築いていく。
気が付くと自分の周りに友の姿はなく、多くの墓標が築かれていた。
一人でも多くの人を助けたいと全力で戦った。けれど、結果として多くの者を失った。
ただ一人自分だけが生き残った。
誓いを捧げた時輝いていた剣は、血で濁りくすんでいた。
自分には守れない願いだったのだろうか? 自分には荷が重い大役だったのだろうか?
疑問と後悔だけが自分の中に残った。
すべてを忘れ、逃げ出し楽になりたいと思った。けれど、逃げた先に安息はなく、ただただ死が付きまとった。
結局自分はそれらを見過ごすことは出来なかった。だから自分は、再び泥沼にはまり込むように、先の見えない戦いを再び歩み始めた。
「……約束したから、守るって。だから……俺は、諦めない」
自分と同じように守ろうとしたものを守れず、己の無力者に嘆いていた少年の口からは、エリスとは違う答えが返ってきた。
少年の黄金色の瞳には、先ほどまでの愁いの色はなく、強い意志がともっていた。
自分にもこれだけの意思があったらもっと違っていたのかもしれない。そう思えた。
(いや……まだ諦めてはいけなかったのかもしれない)
エリスが背負ったものは簡単にあきらめていいものではなかった。その上、想像もできないような困難が降りかかることも判っていたはずだ。それなのに諦めてしまった自分が許せないように思えた。
ずきりと胸のあたりが熱く痛む。まだやれる。まだ進める。そう、背中押すように響いた。
「……なら、ともに来ないか?」
気が付くとエリスは手をさし伸ばし、そう告げた。
目の前の少年は非力だ。けれど、自分にはないほど強い意志がある。彼が前を見続けるなら、自分ももう一度前を見られる気がする。そう思えた。
「私は魔王を殺すものだ」
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