能力者達の魔術戦線

雨神サテラ

第1話 光の卵

ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ

(ん… もう朝か…)

ㅤ目覚まし時計の音とともに、俺———鈴ヶ谷快斗すずがやかいとは目を覚ました。時計を見る。設定してある時間は————12時。

(なんで俺こんな時間にセットしてんの!?)

ㅤまぁ、今日は春休みだしゆっくりできるな。もう少し寝るか…

ㅤそう思ったときだった。

「快斗ーーーー!!」

ㅤん、この声は。

「いつまで寝てんのよー!!」

ガチャガチャ。

「ほら!やっぱり寝てた!」

ㅤやっぱりお前か…

ㅤ声の主は、俺のカノジョの宮北咲みやきたさきだ。後ろで結んだ明るい茶色の髪に同色の目、俺には勿体無いほどの可愛い女性だ。

「よぉ、咲。」

「なにが『よぉ』よ!10時から買い物に出かける約束してたの忘れたの!?」

…あ。

ㅤそうだ、今日は咲と10時から買い物する約束していたんだった…

「ごめん!」

ㅤ素直に謝る。彼女をあまり怒らせないほうがいい。

「ほら!急いで!早くしないとロイヤルミルクホイップパンケーキ黄金の林檎バージョンが売り切れちゃうから!あれ今日限定なの!」

ㅤ彼女はスイーツには目がない。新作は必ず発売初日に食べに行き、期間限定のものとなると食べなきゃ気が済まない。でもそのわりには太ってないというおかしな体の構造をしている。

「わかった。すぐいくから待ってろ!」

ㅤん?待て、あいつはなんで家に入って来れたんだ?

「…おい、お前なんで家に入って来れた?鍵掛かってたろ?」

「合鍵を作ってあるのよ。」

…は?

「いやそれ犯罪だろ!」



「うぅー!いっぱい買ったね!パンケーキも美味しかったなー。」

「そうだね。」

ㅤ…うん…買いすぎです。

ㅤ生活用品にお菓子、さらにはゲーム機まで。実にショッピングカート6つ分にもなる。

ㅤ金あり過ぎだろ!

ㅤ一日の出費額エグいぞこりゃあ。

ㅤてかどうやって持って帰るんだこれ。

「じゃあ帰りますかー!」

ㅤそんなことも気にせず帰る気の咲に、俺が絶望的な一言を。

「…どうやって持って帰るつもり?」

「…あ」

ㅤどうやら考えてなかったらしい。

「歩きだと2時間は掛かるぞ」

ㅤさらに追い打ちをかける。

「あ…あぁ…」

「どうすんだよこれ」

「…どうしよ」

ㅤ半泣きで『助けて!』という目でこちらを見てくる。…うん、可愛い。

ㅤいつもはしっかりしているのだが、ショッピングとなると後先考えないのが彼女の悪い癖だ。

「どうしよっか。」

ㅤ打開策が見つからない。

ㅤ現在の時刻は15時30分。

ㅤとりあえず近くのベンチに座る。

ㅤさて、どうしたものか。

ㅤ親に迎えに来てもらうにも、俺の母は出張中だ。父は4年前、亡くなっている。咲は一人暮らしで、両親も来られないし…

ㅤなどと考えて、ふと空を見上げる。

(…ん?)

ㅤ遠くに煌めくものが。

ㅤ衛生か飛行機か?と思ったが、違う。

ㅤどんどんこちらに向かってきている。

ㅤ落ちてきているのだ。光が。

「おい、咲。あそこ何か見えないか?光ってるやつ。」

ㅤ空を指差す。

「見えるよ。何だろうね、あれ。」

ㅤ咲の目はいいほうだが、何かはわからないらしい。

ㅤ俺は、その光を引き込まれたかのごとく凝視した。

ㅤ何かがおこる。そんな気がした。

ㅤ咲も同じく、光を眺めていた。

ㅤ光は次第にその姿を現す。

ㅤまだ遠いのでよくわからないが、卵の様な形だ。

「あれは…卵?」

「カプセルか何かか?」

ㅤ俺がそう言った直後、その光のカプセルは速度を速め、凄まじい速度で落下してきた。いや、あれはもう落下の域を超えている。とにかく速いのだ。

「速い…!」

ㅤ咲が呟いた。

ㅤ俺達とカプセルとの差が残り50mほどまで狭ばった——その時、今度は減速したのだ。ゆっくり、ゆっくりと降りてくる。

ㅤ俺達はもう声を出すことすらできなかった。

ㅤカプセルの大きさは人が10人入るほどの大きさだ。それが俺達が座ってるベンチまで残り2m。

ㅤ呑み込まれる…!

ㅤそう思った瞬間だった。

ㅤその光が、ただでさえ明るいのに更に明るくなった。

ㅤそして、俺達はその光の卵ライトカプセルに呑み込まれた—————。

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