第28話 火打石
「止まっていれば…大丈夫だよな?よし、それじゃあ、貰いますよっと…。」
兵士の腰からサーベルと所持していた拳銃を取り、とりあえずベルトごと取りストレージに収容する作業をする。
本当は、殺しておいた方が効果的である。
兵士というのはもとより身体、魂でさえも武器なのだ。
だから、本当は殺しておきたい。
脅威の排除っと、言った方がいいかもしれない。
そんなことを思いながら武器を盗んで行く。
「あとは…あの船だけか。行こう。」
目の前にある黒船はただひっそりと彼を待ち受けていた。
「おい、なんだ!どうした?」
「わかりません!ですが、おそらくエルフの残党によるものかと…。」
「くっそ…こんな時に…。」
「どうします!」
「こうなったら、砲撃を!」
「待て!味方もいるんだ!」
「待てるかよ!俺は、艦長に許可を貰いに行くぞ!」
「落ち着けって、まだ敵の姿を確認出来ていない!」
「場所?村がある所だろ?すでにわかっている!」
「ああ、奴ら同胞が焼かれたからって殺気だってやがるんだよ!まったく、ほんとエルフって、いうのは使えない種族だな?脳みそ入ってのかって聞きてえよ?まあ、あいつらどうせ爺と婆しかいないだろうよ。」
「そうだな、だいたいあいつらは国を持たないはぐれ者の集まりだ。殺されたって仕方がないような奴らだ。」
「そうだ、殺せ!奴らに報復を!」
「我が世界に祝福を!」
「「我が世界に祝福を!!」」
船の上ではどうやら船員達が直人の陽動に気づいたらしい。
しかし、騒いではいるもののまだ動きはなかった。
「…いまのうちですね。見えるものほど頼りなし(ディスパリスインディスト)!」
(これで…大丈夫のはず…。)
小声で呪文を唱えて船に乗り込む。
(時間との勝負ですね…もう魔法が持ちません。)
イリスは、焦りを感じていた。
早くしなければ自分自身もそして、もちろん彼もこの川を渡ることができなくなる。
(直人さんには黙っていましたが、この作戦には少し問題がありました。どちらか一人が欠けてしまうと成立しなくなるんです。)
私は舟を盗むだけではなく魔法を使う必要もありました。まず、第一に壁の破壊、次にここまで泳ぐこと、そしてあなたが死んだ時のために。
私一人では確かに不可能ではありました。
けれど、ここまでくれば後は見つからずに逃げればいいだけです。
(よし、あとはこの小舟を降ろすだけです。もうあとは…。)
「!?」
違うそうじゃない、まだ解決していません。
まだ、この船が残っています。
(しかし、どうすれば…。まずは、舟を?それとも、この船をどうにかしなくては…。直人さん…早く来てください。)
「おっと、悪い!」
「っ!」
「ん?」
「おい、どうした?」
「いや…気のせいかな?」
「まったく、疲れているんじゃねえの?」
「そうかもな…。」
「それより、早くコイツを降ろそうぜ。」
「ああ、そうだな。おい、みんな武器は持ったか?」
「おうよ!それにしてもいい機会だな。新品のこいつを使うにはいい機会だ。」
「ははは、そうだな。なんせ、我が教会の最新鋭兵器だ。」
「まったく、こんなことになるとはな。」
「本当だぜ、いきなりこいつの出番になるとはな。」
「こいつがあれば、解放軍なんざ物の数ではないだろう。」
「戦争は変わるさ。」
「そうだな、ついに俺達の手にもこいつが…。」
「どうした、新入り?」
「いえ、こんな日が来るとは思っていませんでした。早く陸の部隊にもこれを渡してエルフを根絶やしに壁を作りましょう!まずは、明日来る上官殿に今日の成果を!」
「ふう、熱いねえ。さすが、陸の大将さんだ。」
「何を言っているんですか?大将じゃ終わりませんよ!」
「ったく、威勢がいいな。」
「早く運んでやろうぜ!こいつを!」
そう言いながら彼らは次々と小舟に乗り込み直人のいる施設へ向かって行った。
(舟が…。どうすれば…。いえ、まだ残っています。舟に隠れていましょう。)
イリスは、残っている小舟に乗り込み彼らを見送った。
(プライド・スリックス…しかもあんなにたくさん…。まずいですね、直人さん早くこちらに…。)
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