第26話 伏兵
(派手にやりますね、転生者様は…。)
高月直人が放った矢が見えた。
矢自体が燃えている…というよりは矢の先だけが飛んで行っているという感じだ。
だが、それでもその矢は火を纏ったまま落ちていく。
火炎瓶自体かなり重さがあるというのに面白いものだ。
やはり、転生者の可能性が高いだろう。
それこそ、神待告人(コンタクフェッション)の言う通りにだ。
(ですが、やはり私はあなたをまだ信じられないようです…。)
仮にあなたが私を助けるために殺人を犯したとしても私は信じないでしょう。
あなたに助けられたあの広場での出来事は私には到底信じられないことでした。
けれど、あなたが密偵だとしたら?
それこそ、何もかも記憶消されたり、情報操作されたりしただけの特殊戦闘員なのでは?
(あなたの記憶の地図(カルテルプラン)の地図には何も表示されてはいなかった。けれど、それがあなたのことを示しているものではありません。
他の国で産まれ育ち、この付近でのあなたの血のルーツがなく、かつここに運ばれてくればあり得ます。)
イリスはしばらく火を見ていた。
(あの船だって、そうですね。エルフがいた村もそうでした。)
「「あなたの前には、いつも敵がいますね。」」
そう、イリスは口にした。
「さて、私もそろそろ行きますか。」
言い訳のように口にする。たとえ、どんなことになったとしても大丈夫だろう。
マリアさんの所に行けばすべて判明するはずだ。
彼女たちなら彼についてわかるはずなのだ。
「ふう~…せい!」
壁は確かに大きかったでもそれこそ大したことはない。
問題は、高月直人という少年を向かい入れることで何が起きるかだ。
冷たい水が身体に当たる。
それでも、彼女はただ水の中を泳いで行く。
(…イリスが上手くやってくれるといいんだけどね。)
直人は、正教会の施設への侵入に成功し妨害工作とまでは行かないが先ほどと同じように火炎瓶のついた矢を放つか、投げながら施設内を駆け巡っていた。
その矢も残り5本しかない。
町まで素材を取りに行くのもいいかもしれないが、あいにくここには武器になりそうな物、武器その物が置いてあるのでただただ都合がいい場所だった。
「居たぞ!」
「おっと…それじゃあ行きますか。」
そう言って、右中指で左腕をなぞる。そうするだけで目の前の兵士は止まる。
彼の手に、サーベルが握られているが今、この時だけはただの鉄の塊に過ぎない。
「…ひやひやするな。本当に、止まっているのかわからなくなる。」
イリスには時間を稼ぐと伝えている。
けれど、この能力自体はただ時を止めるだけのモノで進めることはできない。
つまり、時間を稼ぐという目的には不適ではあるが、不必要では無いっと、言ったところだ。
(この間に船とかこの施設の兵士を全員倒せば目的は果たせる。)
そんな短絡的な考えが直人の頭を次第に、支配していく。
その度に、他のことやどこでやり過ごすのかを考えるが、ただ同じ考えが間隔を狭めながら流れ込んでくる。
(落ち着け…どちらにせよイリスにこの事がばれたら面倒だ。いや、もうすでにばれているのかもしれないな。)
蠟人形のように不気味な人間を避けて行く。
そして、また時間を動かし、止める。
道には、人の濃度が時間につれて高くなっていく。
しかし、この場所にとどまらなければならず、移動し続けなければならない。
(無限に時間があるのも地獄かもしれないな…。)
そう思い始めた時、聞いたことが無い音が聞こえた。
慌てて、その音を確認しようと建物の外壁から身を乗り出すとそれは、こちらに口を向けた。
「!」
慌てて身体を引き戻した。
その直後、またもや別の方向からその音が聞こえた。
(銃…!?)
もう一度、時を止めて今度は敵兵士の前に出た。
5つのライフルは、兵士に担がれていた。
そして、改めて銃であることを確認した直人はあることに気づいた。
一つは、発射された弾を止めることはほとんど不可能だということ。
もう一つは、女性兵士も正教会にはいること。
最後に、イリスが死ぬ可能性が高いことを銃は直人をあざ笑うように語っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます