第17話 部屋に主人公(男)を連れ込むな!
異世界と言えども家のつくりは俺が前居た世界とは何も変わらない…そんな気がした。
少し雑ではあるが木造の家には木々特有の匂いがうっすらと香っていた。
それこそ、まるで家族を迎え入れるように。
そして、俺を嫌悪するように匂いを放っていた。
俺はその家に入るや否やすぐさま使えそうな物を探した。
今、俺が必要な物は服とタオルだ。
食料と水はどうでもいいというか持っているから大丈夫だ。
まあ、あったのは水筒くらいだったのが。
家の中には暖炉もなければ水道設備も見当たらない。
そして、井戸もまだ見つけてないことから考えるにこの村?はかなり規模が大きかったことがわかる。
ようするに、村人の行動範囲が大きいということだ。
おそらく、雨水を貯める樽が家の横にあるとは思う。
しかし、その水をエルフがどう利用していたかは定かではない。
エルフが水に含まれる細菌やバクテリア、寄生虫に対してどの程度の知識があり、抵抗力があるのかわからないからだ。
家は、外からの光によって照らされていて明るくはあるが少し薄暗い。
だが、何かを探すのに困ることはない。
そのくらいの些細な問題だった。
リビングルームに入ると、そこには投げ捨てられた編み棒と糸と、踏みつけられたシャツが落ちていた。
生活感のあるその光景はどこかおぞましさを感じさせるものだった。
机の上には、畳まれた服と下着とタオルが何枚か置いてあった。
俺は、着ていた黒色のコートを捨てて、机の上にある服に着替えることにした。
服は意外にも丁度いいサイズで小さくて苦しいと言う事は無かった。
そんな風にして、タオル以外ほとんど見つけていなかった俺の所にイリスが探索を終えて戻ってこちらにやって来た。
「直人さん、何か見つかり…ましたか?…何で着替えているんですか?」
ガチャという音と共にイリスが何かを持ってやって来た。
そして、俺の姿を見るなりげんなりとした顔を浮かべた。
「あの…ですねえ、私が頑張って使えそうな物は無いか探している間あなたは着替えをしているって、どういうことですか?
明らかに、それ女性が真っ先にやりそうなことですよねえ?
何であなたがやっているんですか?」
イリスは、俺を非難するような視線を向けてきた。
まあ、俺が悪いだけなんだけどね。
「はあ…まったく、おこですよ!おこ!」
「いや、すまない少し魔が差して…。」
「本当に信じられません!私だって、こんな服装嫌なんですよ!
早くシャワー浴びたり、温かい湯水に使ったりしたいんですから!」
「それは、わかるけど…あっ、でも一つだけいいことがあるよ。」
「本当ですか?」
「ああ。」
「…ジー。本当ですかあ?」
「本当だって、その証拠がここにはあるじゃないか!」
そして、俺はおもむろに衣類の山を指さした。
それは、俺が着替える際に下着を見つけた所だ。
「ただ、服の山ですよね?」っと、イリスはつまらなさそうに言った。
「だから、ほら…ここ!」
「なんですか?」
「ここだって!」
「…何も変わりはないように思えますが…。」
「いや、だからさあ…。」
「だから、なんですか!」
(うぅ…思春期特有のこの何とも言えない恥かしい気持ちが…。
頼む、気づいてくれよ!この山の中に女性用の下着、つまり、パンツがあるんだよ!
しかも、これ女児用と女性用の物の二つがある。
さらに言えば、女性用はサイズが違う物があるから…その…そういうことなの!)
「ああ、もう…言うよ。だけどその…引かないでよね?」
俺は、もう諦めることにした。物凄く恥ずかしくつらい。
そして、おそらく蔑まれられる。
…なんで転生したらこんなことになるのやら。
もしイリスが小学校三年生くらいの女の子だったら、下着をタオルに包んで渡して向こうで着替えて着なさいって、言えば万事解決のなのだが…。
あっ、そうだ!包んで渡せば…いや、服の山に手を突っ込んで下着を鷲掴みタオルにくるむ時点でやべー奴だろ!
落ち着けよ、たかが布切れだ!
女性用下着って、言えば恥ずかしくない!
「あのさ、イリス…。」
「どうしたのよ、さっきから情緒不安定?大丈夫、何か嫌な物見た?」
「いや、そうじゃなくてさ…。」
「それじゃあ、どうしたの?」
「そのな、女性用の下着を見つけてたんだ。それで…何かというとサイズが三つくらいあるからもしかしたらこの家に香水とか、化粧品があるんじゃないかなぁ~っと。」
その瞬間、俺の頬が思いっきり叩かれたのは言うまでもない。
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