第15話 燃やされる理由?
「ところで、さあ。」
「はい、何でしょうか?」
「分離壁って、どれくらいの長さがあるの?」
「聞いた話では、もうほとんど出来上がっているようです。
この前、破壊したものもかなり距離がありましたから。」
「そうなんだ。」
俺とイリスは身をかがめながら前へと進んでいた。
結論から言うと、国境の境に湖と川があるためそこから国境を超えるということになった。
まあ、それ自体は何も問題なく行けるとは思う。
この四日間でトールから貰った道具は、サングラス、ハンカチ、タオルセット、水中メガネの四つで風呂に入れないのでストレージから水を取り出してタオルで濡らしてなんとかした。
「…この近くです。」
「ああ、わかった。」
「っ!伏せて!」
「それでさあ…。」
「あはは、まああれだな。」
「そうだよなあ、そんで女房と来たらもう少し稼いで来いとしか言わなくて。」
「世知辛いねえ、まあうちも似たもんさ。」
とっさに、藪に隠れた。
どうやら正教会の兵士らしかった。
しかし、兵士は鎧甲冑を纏うこともなく、また紋章の付いたいかにも中世ヨーロッパの軍服を着てもいなかった。
けれど、色は統一されているようで茶色だった。
「あの…。」
「静かに…正教会の兵士ですね。」っと、イリスは冷静に言ったが直人は聞いていなかった。
二人は今、密着した状態でしかも直人はイリスに覆いかぶさられている。
「…。」
「…。」
鎧越しに伝わる彼女の温度がどんどん伝わってきた。
ここ数日過ごしたため、意識から離れては行ってはいたがまた戻ってきた。
そして、彼女の匂いが溢れてきた。
さすがに、これはもう女性としか認知できない。
一瞬、世界が止まったような気がした。
もちろん、比喩だ。
けれど、俺の体が彼女を女性として再認識するのには充分だった。
足音が近づくに連れて彼女の体も迫ってきた。
彼女の纏う鎧による痛みを感じるが、そんなことはどうでもよかった。
前かがみになり、息を潜むる彼女をよそに、直人はただ彼女の胸元を見ることしかできなかった。
自分で意識的にはやってはいない。
しかし、健全な高校生には充分過ぎる刺激だった。
(…どうしよう。いや、ダメだってこういう時は素数を数えるんだって言ってたな。
いや、でも聞いた話だと役に立たないって言ってたっけ?)
年相応というか、その年頃の女の子よりもふくよかな胸だった。
女性経験のほとんどない直人にはとても新鮮だった。
今なら時間を止めて好きなだけこの時を手にすることが彼にはできたであろう。
けれども、彼はそうしなかった。
止めることはせずにただこの時を過ごした。
ヘタレなのかもしれないが、彼はそんなことも考えもせずただじっと時が過ぎるのを待った。
「…行きましたね。」
「ああ、そうだね。」
「ばれなくて、良かったです。」
「ああ、そうだね。」
「…直人さん?なぜ私の方を見ないのですか?それに、顔を赤いですよ?」
「そうかな、ちょっとドキドキして。」
「はい、私も一時はどうなるかと。さて、この先です。」
イリスに導かれるまま俺はただ歩いた。
しばらくして、着いたのは全焼した家屋のある村だった。
「…なあ、何でここに?」
「そうですね、私も何でここに来たのかわかりません。」
黒い家屋のある村、けれど全てが燃えているのではなく一軒のみだった。
何でかというと、他の家は全く無傷で広場には火が置かれていた。
「さて、どうしますか?直人さん?」
「とりあえず、使える物を探そう。また、戻って来ると思うから。」
「…そう…ですね。他には?」
「イリスさん?」
「あの…これは一体何ですか?」
イリスは広場にある火を指さした。
俺とイリスを導いた煙の正体、熱源。
つまり、「この村の住人だ。」
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