第13話 俺は強くない。
時間停止、いわゆる超能力の一つだ。
つまり、俺はチート能力を一つ保持、それだけでなくステータスも保持しているから実質無敵(?)…のはずである。
とはいえ、本当にそれが有用であるのかは人による。
少なくとも俺は、この能力を乱用することはないだろう。
「さてっと、それじゃあまずこの機能を使い易くするか。できれば、身体をなぞる距離を一センチに縮められれば…できるんだ。」
「これで良し…設定終了っと。」
世界をもとの早さに戻す。
「あれっ、直人さん?いつのまに?」
「ああ、イリスちょっとね。それじゃあ、行こうか。」
「…あの、どうかされましたか?昨日とは、何か違いますが。」
「いや、何でもないから!正常だから!ほら、行こう。」
俺は話をまくし立ててとりあえず真っ直ぐ進んだ。
この能力の事をなるべく早く話さなくてはならないとは思う。
けれど、それで怪しまれても困る。
だから、いや、だからこそイリスと共にマリアさんの所へ行くしかない。
少なくともそれが今の俺の最適解なのだから。
「…あやしい。」
昨日の今日であんなに人が変わるだろうか。
少なくとも、いや…絶対におかしい。
昨日は成り行き上こうなってはしまったが、気を緩めてしまっていたようだ。
でも、彼は私を信用しているように思える。
…いや、噓だ。
私はただ、この男高月直人を信じたいだけだ。
そうに違いない。
たとえ、彼が本当にマリアさんの言った転生者であっても、神待告人(コンフェクション)の方々が定めた人であっても。
「…信じたい。」
今は、ただそれだけだ。
未だに、この人の宗派を聞き出せていない。
彼が正教会側の密偵だったら?
もしくはあの事件が意図的に作り出されたものだったら?
不安だ。
そんな思いが彼女の中では錯綜している。
昨日の夜も寝首を搔かれないか不安でしたかなかった。
そして、この鎧も…。
なぜ、私はこの鎧を来ているのだろう。
ああ、なぜこう人を疑ってしまうのだろうか。
そこまで、私は愚かなのだろうか。
誰か教えてください。
高月直人は何者なのですか?
私は彼と共に、仲間の元へ戻ってもいいのですか?
教えてください、なぜ私はあの時殺されなかったのですか?
もし、私のせいで誰かを犠牲にし最悪の結果を招いたら誰が私を罰するというのですか?
彼女の中で複雑な思いがうごめき廻る。
それは、美しいものとけがれたものが混ざあっては打消し合い彼女を苦しめていた。
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