第5話 行って帰ってまた戻るのが町

ようやく近くの町にたどり着いた。

本来であれば疲れているはずなのだが、何故か身体が軽い。


「コンビニ…あるかな?」


それくらいの距離しか歩いた気がしない。

まあ、これで疲れてしまうようならこの世界を生き抜くことはできないだろう。っと、思った。

というかなんでもう少し近くにリスポーン地点を設けてくれなかったのだろうか。

隠匿とか、権限とかそんなものなのかな。

まあ、後でこちらから聞けば返事はしてくれるだろう。

こういう時こそ、楽観的に行こう。


そして、俺こと高月直人は歩を進めた。

これから何かしらの出会いがあるだろうか。

とりあえず、資金には極度のインフレーションでない限り生活は可能だとは思う。

宝くじを当てたようなものだ。

生活基盤さえ整えれば他の町に行かなくても…いや、まずこの世界に宅配サービスは存在するのだろうか、インターネットはあるのか…。


「…あるわけないですよね。」


っと、一人呟いた。しかし、SNSもない世界でその行為は傍から見てただのヤバい奴にしか見えない。


…自覚はあるんです。


そうこうするうちに町に着いた。

町の入口には検問があって、そこから入るようだ。

見ると大量の木箱を積んだ馬車があった。

そして、また人々の服装も中世ヨーロッパ風の衣装みたいな感じだった。


「こういう所って、RPGっぽいよね。」っと、小声で言った。


検問所は上中下で分けれていてさらに金額により(主に兵士からの)待遇が変わる。

できることなら上の方がいいのだが中流いわゆる商人などに交わっている。

下、つまり庶民だと待遇が酷い。

まあ、ここがちょうどいい所だろう。

あとは、金を詰めばいいだけだった。

そして、思っていたよりも簡単に町に入れた。

うん、検問所の兵士に五万渡した。

名目は、商品の買い付けって事にしておいた。

なぜなら、先ほど見た馬車の木箱の中身が「「絹」」であったことと、前の商人が「「レーヨン」」を持って来たようで馬鹿にされていたからだ。

この世界でも、開発者が鬱になりそうな発言はやめてほしいです。

あと、絹の輸入先って、日本なんだね。

いや、大東亜共栄圏認定紡績糸って、木箱に書いてあったからそうかなぁって。

あと、書かれてた絵がサムライぽかったら。


町は、人で賑わっていた。

それがいいことなのか悪いことなのかは考え方次第だがまあ、町の中を馬車や車が人々の間を縫って動いていた。

あまり治安のいい場所ではない。

宿屋は至ることろにあり、俗店まがいの物や酒場を兼ねた宿もある。

あまり衣食住にこだわりはないが、どれがまともなのかぐらいは素人目にも分かる。


「…あの店入りたいな。」


まあ、後で探すとしよう。

それよりも武器とか防具が欲しいかな。

どこかに店はないのだろうか。


そう動き回っていると、どうやら広場のような所に出た。


「ん、お!なんかやってんじゃん!」っと何も知らない俺は近くによって行った。

なんとそこには、良く肥えた大男と、メガネをかけたデブと、取り巻きの雑魚そうな者が広場の中心にいた。

何故かその中心の角材は十字架を作るように組み合わされており、手枷と足枷がついていた。

下には燃焼用の布と木々、消火用っぽい砂袋があった。


「…あれは?」

「ははは、見よ。これがあいつらだ!こんな少女ですら利用している!なんと嘆かわしいことだ!」

「「はははははははははは。」」


広場中に笑い声が響き渡る何が楽しいのだろうか?

というか、あれは…女の子なのか。


そこには、美しい少女がいた。

彼女を包む白く半透明の服は彼女の金色の髪を引き立てていた。

けど、朱と服の裂け目、目の腫れが邪魔をしていた。


「そこで我々は、神の名のもとにこの少女を還す。ああ、なんと優しいのだろう!誰がこんな魔女となった少女を助けるのだろう!それは私、ピエールである!」


メガネの男は、そう言った。偉そうな衣装を纏い、偉そうに。


「さあ、聖油で、聖火で貴様の身を清めてやろう。さあ、スペードよ!」

「行くぜ野郎ども!はははっ、くらいやがれ、ビッチな魔女は彼女の身から離れよ!このおなごは乙女であるぞ!」

「「ははははははははははははははははははははは。」」


まるで彼女の死を楽しんでいるようだった。


「…ふざけんなよ。」


さすがに、放っておけはしなかった。

なぜならもうそんな事には飽き飽きしていた。

前の世界ではそうだった、けど、この世界ではもう見て見ぬふりはしなくていい。


俺は、小さなナイフを手に取った。

そして、俺は「「軽く」」跳躍した。

まるで、重力を蹴り上げるようにして飛んだ俺は姿勢を変え、広場を取り囲んでいる建物の外壁を蹴り、今、油を拘束した少女にかけようとする、脂肪と樽に入っている聖油と同量なくらいの大男の前に着地し、右手の掌底で顎を穿ち、掌底を放つ際に手を話したナイフを左手で拾い腹を横になぞった。


「なっ…。」


大男は後ろに飛んでいった。


「えっ…。」


少女は目を見開いてこちらを見ていた。


「今、助けるから…。」


そう言って、ナイフを右に持ち替えて足枷と手枷をナイフで切った。

俺は、ナイフを捨てて彼女を抱き、広場をあとにすることにした。

跳躍で外壁を三回蹴り、屋根の上に登った。


そうして、俺と彼女は町を後にした。


彼女と言葉を交わしたのはそれから四時間くらい後のことだった。

俺は、ただ彼女を抱きかかえながら全力で逃げた。

ただ遠くに、行く先もわからないまま、ただ進むだけだった。


そして、ようやく俺は止まった。


「ここなら大丈夫かな。」


深い森の奥だった。

木々の葉で溺れてしまいそうだ。


「…あの…助けてくださってありがとうございます。名前を教えていただけますか?」

「あっ、はい。高月直人といいます。あなたの名前は?」

「イリス・アスモデウス・ファブニールと申します。その早速ですが、私を連れていってくれませんか?行かなけらばならない場所があるのです。」

「わかりました。」

「なっ…。即決ですねえ。」


ふふっと、彼女は嬉しそうに笑った。


「はあ、それにしても疲れましたね。…あの、そのケガは。」

「ああ、いいんです。ちょっと…拷問されたくらいですから。」

彼女は恥ずかしそうに言った。


「…治せることができればいいのですが。」

「そんなことはありません、大丈夫ですよ、これくらい。」


俺は、彼女の手を取り、触れた。

特に意味や理由はないが見てはいられなかった。

尊く健気な彼女が放っておけなかった。


「あれ…。」

「えっ…んあっ。」


急に彼女手を触れていた右手が光出した。

即座に手を話そうとする彼女に掴まれた。


「えっ…ちょっと何をして。」

「…大丈夫です、んっはあ…このまま…っはぁ…痛くないですから…あんっ。」


気恥ずかしさのあまり俺は目を背けた。

そして、光が止み俺は彼女に目を向けた。


「…!!」


そこには、美しい少女がいた。






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