第2話 サインインって、結構悩みます。
「転生?」
「ああ、そうだ。」
「どこに?」
「ここじゃないどこかだ。」
「アバウトすぎますよ…。」
「まあ、そうなんだよなぁ…本当に申し訳ないのだが神様が人に謝ると大変なことになるからねえ。それで、何か代わりのモノを与えるというのが通例になっているんだよ。あと…どうだい落ち着いたかい?」
「いえ…。」
「ああ、それじゃあお茶にしよう。」
そういうと高圧電流はどこからか円形のテーブルと、ティーセットを出した。
ご丁寧にスコーンが用意されていた。
俺はとりあえず席に座った。
すると、トールは俺に紅茶を入れてくれた。
俺は、とりあえずその紅茶を飲むと、トールも席に座った。
というかどうやってモノを持っているんだこいつは。
しばらくして、俺は落ち着くとトールに話しかけることにした。
「なあ、本当に俺は死んだのか?」
「ああ、それは間違いない…遺体も確認した。」
「見せてもらえるか?」
「ああ…気が済むなら。」
そう言って、俺は自分の死体を見せてもらった。
顔はどうなっているか確認はできないが身体を強く打っている。
打撲ではない。
一通り確認が済むと俺はトールに向き直った。
「なあ、転生って生き返ることはできないのか?」
「ああ、それはできない。」
「そっか。」
「それでなのだが、君には転生を選んでほしいんだ。」
「なんでですか・・・?」
「ああ、ほとんどが転生を選ばなかったからだよ。まあ、さすがに説得はしてみたんだけどね。どうやら、君の居た世界は辛いことばかりのようだ。おそらく、それが原因だろう。異世界に行っても苦労することがあるというのは、目に見えていたらしい。それで、断られたよ。」
「そうなんですか…。」
確かに話を聞く限り間違っている節はないと思う。
現に犯罪とか、法律外の犯行、社会への不安、見えない未来、増えすぎた競争相手、窒息するほどの人間関係などさまざまな要因があるのは確かだ。
そして、不慮とはいえ死亡したので自殺願望云々ではなく、終わりを迎えることができたのだろう。
そして、先ほどから俺とトールが話しているようにちゃんと納得して消えてったのならば彼らもそれが本望だろう。
しかし、疑問がある。
確かに、そういった理由があるとはいえ大多数の人がそのまま死を受け入れるのはどこかおかしい。
無念だとは思わなかったのだろうか?
「なあ、本当に彼等は納得して死を選んだのか?」
「はい、それとこれを見てくれ。」
そういうとトールは、また映像を見せてくれた。
そこには、無残に横たわるスカイツリー、燃える街、液状化の被害を受けたとされる家々が順々に決まった時間ごとに流れて行った。
俺は、ただそれを見ていた。
「…なあ、これもお前のオーダーミスか?」
「いや、これはプロメテウスによるオーダーミスだよ。」
「そろいも揃って…。」
「ああ…そうだね。」
「なるほど…確かにこれなら死んだ方がいいかもな。」
「…そういうことだろう…しかし。」
「わかった、転生すればいいんだろう。」
「やってくれるのかい?」
「ああ、そっちの方がいいや。」
「そうか…なら、案内するよ。」
そういうと俺とトールの居た場所は急に虚無へと変わった。
「おい、なんだよ…いきなり。」
「はははっ、大丈夫だよ。君には祝福(ギフト)を贈るよ。異世界っていうのも案外楽しいかもね。」
「いや、ちょっと待てって、まさかいきなりそっちへ行けとか?」
「ああ、もちろんだ。大丈夫だよ、君の行く世界は君の世界でのRPG系の世界だから。」
「いや、あの俺そういうのは…。」
「まあ、頑張ってくれたまえ。いや~、良かったよ。君にまだ希望があって。あそこに居た人達の中のラストナンバー。さようなら、そして、おめでとう。」
「待て、一つ質問が…。」
「なんだい?」
「俺は、そこへ行ったら何歳なんだ?」
「15歳だよ。転生とは行っても歳を君と同じに合わせないと君が壊れるからね。最後にもう一つ、君はこの先何回か死ぬことになるかもしれない。蘇生するにはタイムリミットがあるから気をつけて。」
そうトールは、言うと俺の目の前は真っ黒になった。
最後まで、電流が渦巻いているだけの形がわからない者だったが。
顔のようなものが見えた気がした。
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