「にぎやかな日」

 レイミア・オルロックは古いお城に暮らしています。

 とっても広くてとっても静かです。

 今日は、お父さんもお母さんもお出かけしています。

 レイミアは、ひとりでお留守番です。


 お城には、誰もいないはずでした。

 けれど、お城のどこからか声が聞こえてきます。

 レイミアは、不思議に思いました。


 聞こえてくるのは誰も行かない部屋の中からでした。

 声が気になったレイミアは、中の様子を見たくなりました。

 でも部屋にはカギがかかています。


 カギはお父さんが持っていますが、今、留守にしています。

 レイミアは、お父さんの書斎に入り込むとカギを探しました。


 そして、机の引き出しからカギを見つけました。


 レイミアはカギを持って声の聞こえる部屋に行きました。

 そしてカギを使って扉を開けました。


 部屋には誰もいませんでした。

 机と本棚以外には何もありません。

 でも声をこの部屋から聞こえてきます。

 よく耳を澄ますと今でもどこからか声が聞こえます。

 それは机の上にあった本からでした。

 本を開くとそのページから何かが飛び出しました。

 それはページに書かれていた゛ことば゛たちでした。

 "ことば"たちが逃げ出してしまった為、開いた本のページが真っ白になってしまいました。


 何かいけないことをしてしまったと思い、レイミアは、慌てて"ことば"たちを捕まえようとします。

 でも、相手は"ことば"です。

 手では捕まえることができません。

 レイミアが困っていると本の中からまた声が聞こえていました。

 また"ことば"たちが逃げ出したら大変です。レイミアは注意深く声のするページを開きました。それは一番最初のページでした。


 "言葉を書きとめよ。されば言葉はとどまる"


 ページにはそう書かれていました。レイミアが一番知りたかったことです。


 レイミアは、"ことば゛を書き取ろうと耳を澄ましました。

 すると聞こえてきたのは、

「窮屈」でした。

 次に聞こえてきたのは「堅苦しい」です。

 そして「狭い」でした。


 レイミアは、急いでその三語を白紙のページに書き留めました。

 するとどうでしょう。

 部屋の中が静かになりました。

 レイミアはページをそっと見ました。

「窮屈」「堅苦しい」「狭い」の三語が小さく揺れています。

 どうやらまだ本から逃げ出したいようです。


 レイミアは、また"ことば"たちが逃げては大変と、慌てて本を閉じました。

 そして部屋から出ると急いでカギをかけました。


 こうして、お城の中は静かになりました。


 次日、お父さんとお母さんが帰ってきました。

 何かあったか聞かれましたが、昨日あったことは内緒にしておきました。

 でもあの部屋の前を通るたびにあの逃げ出した"ことば"達の事を思い出しました。

 レイミアは、ちょっぴりあの"ことば"達がかわいそうに思いえました。


 ちょっとだけですけどね。



 おわり

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レイミア・オルロックの冒険 ジップ @zip7894

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