第27話 あなたがくれた

瑠依、あなたは馬鹿だよ。


私だけが助かっても幸せなわけがない。


ここは、あなたと私がいて初めて成立する世界なのに。


この先私はどう生きたらいいの?


どうすればいいの?


あなたのせいで知らなくていい感情まで知ってしまったのに。


この先、この感情をどう操ればいいの?


私ひとりじゃ分からない。


私だけでどうすればいいの?


ねぇ、応えてよ。


本当は何処かにいるんでしょ?


ねぇ、出てきてよ…


気づけば私は窓から身を乗り出して…


パシンッ


その場に倒れてしまった。


頬が痛い。


上を見上げると…


美波が泣いている。


「何してんの。」


「え?」


「何してんのって言ってんの!」


「瑠依を…探しに…」


「もう一回叩くよ!」


叩かれるっ…!


目を開けてみると美波が私を抱きしめていた。


「馬鹿…!いなくならないでよ!」


いつも笑顔ばかりの可愛い美波が、不細工な顔で泣いている。


「藍まで死んでどうするの!せっかく瑠依くんが助けてくれたんだから生きなきゃ駄目でしょ!」


「そ、そんなこと言っても…瑠依がいなきゃ私は…!」


「私がいるじゃん!瑠依くんほど藍に何かを与えることなんて出来ない。だけど、隣にいてあげることは私にでもできる!だから…」


また、涙が溢れた。


いつの間にか、私のために怒ってくれる人が増えていたんだ。


二人とも大きな声で、小さな子が泣くように病室でひたすら泣いた。



「私、ちゃんと生きるよ。ごめんね美波。せっかく瑠依が二度も頑張ってくれたんだから、無駄にしちゃ駄目だよね…」


精一杯の笑顔で美波に言った。


美波も同じように笑顔で


「そうだよ。」


と言って、もう一度私を抱きしめてくれた。

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