第2話 質問

「君は何を撮っているの?」


背後から聞こえてくる、少し低くて落ち着いていて、どこか優しそうな男声。


私は思わずビックリして、振り向こうとした勢いで転んでしまった。


「あっ…」


「大丈夫?驚かすつもりは無かったんだけど。」


そっと手が、目の前に伸びてくる。


「大丈夫です。」


素っ気無く答えて、相手の差し出してくれた手なんて無視して1人で立った私。


「君は何を撮っていたの?」


また聞いてきた。


「夜空。夜空を撮っていたんです。」


それだけを伝え立ち去ろうとしたら次は…


「そのカメラにはどんな世界が写っているの?」


初対面にも関わらず、質問ばかり。なんなんだこの人は、礼儀を知らないのだろうか。


「初対面の人に質問ばかりして、名前すら名乗らずにいて、不審者だと思われてるって考えないんですか?」


無視して逃げればいいものを、私はついつい口を開いてしまった。


「君は僕を不審者だと思っているの?」


「不審者以外になんて思えばいいんですか?」


くすっと笑っている。


何がおかしいんだろう。


この男は何がしたくて私に話しかけたのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る