第5話 深まる疑問
俺は物事を整理するのは苦手だ。情報が多いと何を考えていいかわからなくなる。そんな俺でもこの状況では一度整理しないと、もうどうしようもないだろう。
まず、ここは異世界らしい。まだ確証は得られないが、そう決めて考えないと何も進まない。そしてこの世界では異世界・・つまり、俺の世界が存在することは学校で習うくらい当然のことだという。なのに異世界ってのは結構デリケートな話題らしく、あまり人に話さない方がいいようだ。
整理しようと考えてみたものの、結局今わかっていることだけでは状況はさっぱりわからない。しかし、今目の前に最大のヒントがいる。
俺の世界にいたはずの人間で、俺のことを知っていて、この世界にいて、異世界について詳しいらしい。この最大の情報源を前にして、俺は聞きたいことを聞けずにいた。
「なんていうか、ずいぶん大人っぽくなったね。同い年とは思えないよ。」
なぜ俺はこんな世間話をしているのか。久しぶりにあった友人に話す内容としては普通だが、この状況は普通ではない。
「こっちの世界とそっちの世界は時間の進み方が同じじゃないから。私は今21歳よ。高橋くんは今18歳くらいでしょう?」
せっかくこっちが日常会話で冷静さを取り戻そうとしているのに、また新しい情報で混乱させてくる。
「こっちの世界は時間の進み方が早いってこと?じゃあ、俺がこっちに来てる間むこうの世界はあんまり時間が進んでないってこと?」
「違うわ。時間の進む速さは同じよ。こっちの世界とむこうの世界は交互に動くの。こっちの時間が進んでる間、むこうの世界は時間が止まってて、逆にむこうの時間が進んでる間はこっちの世界は時間が止まってるのよ。動いている時間の長さは一定じゃないから、その時々で進んでいる時と遅れている時があるのよ」
なんとか頭を働かせて答えてみるも、すぐに否定されて難しいことを淡々と言われたので、また頭が追いつかなくなる。
それにしても、まち子ちゃんはずいぶんと雰囲気が変わった。昔から頭は良かったが、もっと好奇心旺盛で無邪気な正確だった。そういえば、セミの鳴き声について教えてくれたのもこの子だ。
「なんでこの世界にいるの?いつから?」
いつの間にか俺は、この世界のことよりも彼女のことが気になりだしていた。しかし、彼女は答えず、表情を変えずにうつむいていた。
「曲道さん!」
突然、家の中に知らない男が慌てた様子で入ってきた。男が「いつものがまた来た」というと、まち子ちゃんは走って家から飛び出していった。
俺はどうしていいかわからなかったが、知らない男と2人きりになるのも気まずいので、まちこちゃんを走って追いかけた。
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