第4話 再会

 「この地図の場所にいる、曲道まち子さんっていう人に相談してみて。私の知ってる中では一番異世界について詳しい人よ。」


 あの女店員にそう言われて、俺は今その場所を探している。文字だとわからないので全部絵と図だけの地図を書いてもらったが、どうも線が歪んでいてわかりにくい。そういえばあの女店員の名前は「和田直子」というらしい。別れる前に読めない名札に書いてある名前を教えてもらった。音だけだと覚えにくいから勝手に想像で漢字を勝手に当ててみたが、なかなかしっくりきた。地味な名前だと思ったが、この世界だとイケイケな今時の子の名前らしい。

 それにしても、今考えると和田直子は俺が異世界から来たことを初めから察していたのだろう。その上であえて食い逃げを見逃し、手助けをしてくれたように思える。ずっと不機嫌そうではあったが、とても助けになった。異世界と聞くとよく思わない人が多いと言っていたが、彼女にも異世界に対して何かの思いがあるのかもしれない。

 本当はこの世界に来た時に俺に話しかけて来た、あの女を探すつもりだったが、もうその必要もなさそうだ。


 そんなことを考えながら歩いていると、目的の場所らしき家が見えて来た。地図がわかりにくい分、これでもかと言うほど口頭で説明を聞いてきたので迷わずに着くとこができた。数学は苦手だが記憶力はいいのだ。


「ごめんください。」


 そこは古そうな民家だった。周りの家も古民家風のデザインなので外から見るとわからなかったが、入ってみるとこの家が実際に古いのだということがよくわかる。玄関が開いていたので入ってみたが、誰もいなさそうだ。ここ以外に行くあてもないし、その曲道さんという人が帰ってくるまで待つことにする。


「お客さん?誰?」


 後ろから声がして振り返ると、そこには見覚えのある女性が立っていた。俺と同じくらいの身長で、真っ黒のショートカット。頭の上には日よけの大きな麦わら帽子をかぶっている。歳は俺よりは上だろうか、女の人の年齢はよくわからない。その女性は俺を見ると、最初に会った時と同じように少し驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻した。その女性は俺がこの世界に来て初めて会った、俺の名前を読んだ女性だった。

 

「何の用」


 彼女は俺に冷たくそう言った。この人は何で俺のことを知ってるんだろう。警戒心を強める。


「あなたが曲道さん?和田直子さんの紹介で来ました。異世界について詳しいって聞いて。さっき会ったよね、何で俺のこと知ってるんですか?」

「高橋くん、私のこと覚えてないんだ。」


 意外な返事が返って来たので固まってしまった。まるで知り合いのように言ってくるが、俺に年上の女性の知り合いなんていない。特に曲道なんて珍しい名前だったら忘れるわけがない。いや、しかし「まちこ」という名前にはなんとなく覚えがある。


「もしかして、子供のころよく遊んだ、まちこちゃん?」


 曲道まち子は小さく頷いた。

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