あ
二人は既に、ひどく荒い息をしていたのだけれど、張り切って進みました。
解放、解放!
これがどんなに嬉しかったことでしょうか!
腕をブンブン振り回します。
誰に叫ばれるでもありません。
ジャックは見回しました。
隣にはチミィ。それ以外は………、誰もいない!!
遠くの、遠くにあった理想へ、やっと手が届いた気がしました。
もう、どうなったって大丈夫だ、と、そんな根拠のない自信さえ、泉が湧き出るように、コンコンと満ち満ちてくるのです。
「ねえ、ジャック!!!」
突然、チミィが叫んで走り出しました。道から逸れて、どこかへ下って行きます。
ジャックはポカンとその後ろ姿を見つめていたのですが、やがて、瞳孔がカッカと開く気がしながら、ウオオと叫びました。
川の音です!川が流れているのです!
ジャックも一目散に駆けて行きました。まだこんな力が残っていたことに驚きです。今なら、あの駅のフェンスくらい、手を一切使わずに飛び越えていけるのではないでしょうか。
ザワザワザクザクと草を踏みつけます。虫が足裏でどんな酷いことになっても、彼は一向に構わないのでした。
「ひゃあ、冷たーい」
まず、チミィの声がして……。
ダブーン!!
ジャックも飛び込みました。
チミィは足だけ浸かっていたのですが、ジャックに突き飛ばされて、バシャンと派手に水を撒き散らしながら、倒れこみます。その飛沫は、透明を越して、白白と見えました。
「ぷはっ」
「なぁ、チミィ!思ったより、結構深いな!こりゃあ良いぞ!」
「ちょっと!心臓止まったかと思ったでしょ!やめてよね!確かにちょっと深いけど、大きい川じゃないし、下は岩だらけなんだから!!」
そう言いながら、顔は笑っています。
ジャックはそのまま、水をゴクゴクと飲みました。
冷たい液体を欲していた体は、すぐにそれを今で到達させ、体の隅々まで急ぎ足に運んで行きました。
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