あ
それでも、チミィはまだ警戒したりないらしく、それから十分も待ち続けた上で、ようやく出発を決断しました。
「慌てないで」
彼女は冷静に指令します。「フェンスの穴は見えにくくなっているんだから、まず手探りでしっかり掴んで、一つ一つ丁寧に登っていくの。足を引っ掛ける時も一緒よ」
こんなわけで、二人は一度もフェンスから転げ落ちることもなく、てっぺんをまたぎ越して、スルスルと降りてこられたのでした。
「チミィ、君は本当に立派だよ。助かった」
「そう?なら良かったわ」
ジャックがチミィの背中を軽く叩くと、チミィはくすぐったそうに笑いました。
「それにしてもお腹が空いたわね。これからどうする?」
「そうだなぁ」
こういうことはジャックの方が詳しいのです。彼はちょっと迷ってから、こう言ってやりました。「しんどいとは思うけど、これから山に行こうと思うんだ」
「まあ、なぜ?」チミィは驚いて、パッと顔をあげました。顔もすすけたように汚れています。
「あの町を見る限り、綺麗な水は少ないと思うんだ。だから、山麓の川を利用する。そこで、野草でも食べてみようよ。毒のなさそうな、葉が柔らかく尖った、ええと、つまり、イネ科っぽい植物とか、あと、生えてれば果物とか、そういうのをさ」
チミィは町の方を見ました。
レンガの積み上がった、綺麗な建物が密集しています。確かに、水は汚れているかもしれません。
「…それに、あそこで目立ったら面倒なことにもなるわね」チミィは口の中で呟き、はっきり「そうしましょう」と答えた。
幸い、山は町のそばにあります。
飲める水が、あればいいのですが。
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