「夜まで待つわけ……には、いかなそうだしなぁ。」

ジャックは悩みました。それ以外に考えが思い浮かびませんが、現在はちょうど昼なのです。


「待つ?」

「いや、賭けようかな。」

「えっ?」

「逃げられるって可能性に、賭けようか。」

「だっ」


ダメ、だよ……。という声は、生まれた途端に消え入るという、そんな感じがしていました。


「やるしかないだろ。」

「見つかったら、殺されるのに?」

「それでもっ」


ジャックは、ゴツン、と額を殴られました。

いや違います。額に頭突きをされたのです。


「…ってぇ……。」

「確実な方法を選ばなきゃっ、死んじゃうもん………。」

「いや、でも、体力が…。」


汗がジワジワと浸み出してきていました。

二人とも既に疲弊しきっているし、服だって、黒くてよく分からないけれど、相当汚れているのです。土が、地肌にまで届いている気がしていました。


「大丈夫。耐えよ?ねっ。じっくりじっくり。」

「あ、ああ………。」


ジャックは曖昧に頷きました。

よくよく考えてみると、確かにチミィの言う通りな気がしてきます。

暗闇に紛れ込めばまさか気づかれることもないでしょう。それに、もしかしたら、その時にはもうあいつらはどこかに行ってるかも……。


「ひぃっ。」

……だが、奴らは思ったよりしつこかったのです。まぁ、それは二人の体質のせいというのもありますが、まだ調べ続けています。それも、木の後ろさえ。


「来るよっ!!!」

これにはジャックも茫然としました。

相手は一人です。不意打ちをすれば何とか倒すことだけなら可能かもしれません。けれど、そうするとあいつらの仲間にも追いかけられます。そうなれば、逃げ切れる自信はありません。


下唇を噛みました。もう、どうしようもないのです。

来る………………!!!!


「ちょっとそこの人!止まりなさい!!止まれ!!!」

ビクリとしました。一瞬、自分のことを言っているのかと思ったからです。


「こら!さっきから不審な行動ばかり繰り返しやがって!見てたんだぞ!!」

(けっ、警察官!!!)


まだ居残ってくれていたのです!


「ふふっ、やっぱり残党が居やがったか。いつ尻尾を出すのかって観察してたが……。大当たりだったようだな。いや、まだ何も分かっちゃいねぇんだが、とりあえず、さっきの事件が起きた後だからな。話を聞かせてもらおう。事情聴取だよ。ほら、来いっ」


その警察官は、私服でした。だから、パッと見では警官だと分かりません。覆面警察官というやつでしょうか。ただ、銃はしっかり握りしめていました。


それから、あの気落ちしていた男も、向こうの方であっさり捕まっています。警察官は複数人でいたようでした。さっき一人で行動してた人が酷い目に遭ったですもんね。


こうして、危機一髪、ジャックとチミィはことなきを得ました。

それで、二人とも静かに夜になるのを待ち続けます。今飛び出すと、警官に捕まるかもしれないでしょう?それに、改札口を監視している奴は捕まっていないかもしれません。ここら辺は用心しておくに限ります。


(さっき、フェンスに登ってたら、警官かあいつらか、どっちかには確実に捕まってたな……。)

ジャックはそう反省して、阻んでくれたチミィを見つめました。すると、彼女の顔もジャックへ向いていたので、目が合う格好になります。他にすることもないので、しばらくそのままでいました。





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