「ジャック!あの人、私の腕を強く掴んだ人よ!」

「本当だ!これはいけない。」

ジャックとチミィは木箱から脱出してすぐに、地面へ飛び降りました。


木の板が何本も間隔を空けて置かれており、そこには鉄の釘が打たれていました。線路上なのです。


「ふふ、ジャック。ここ、飛び跳ねると音がするわよ。ザク、ザクって。線路の周りに砂利が敷き詰められているからだわ。」

「馬鹿だなぁ。音を鳴らしたら相手に気づかれちゃうじゃないか。静かにしてよ。」

「あっ、ホントだ。ごめんなさい。」


貨物庫と貨物庫は繋がれていて、列車に引きづられるように動いていたのですが、その連結部分の隙間からわずかに向こう側が見えるので、二人には人攫いが何をしているか分かったのでした。まだあちら側はチミィとジャックには気づいていないようです。


プゥーーーーー!!!!

轟音が響き、二人の目の前はパッとライトで照らされました。

ジャックはあまりの明るさに目をつぶり、右腕で覆います。


と、その時、チミィは慌てて叫びました。

「ジャック!あの人達こっちに来るわ!」


ジャックは目を剥きました。

こんな危ない時に騒ぐなんてもってのほかだからです。

でも、チミィの声は列車の笛にかき消されて、ジャックにしか聞こえなかったようでした。


「どうするの?!急がなきゃ!」

今度はチミィは小声でまくしたてます。

でも、ジャックにはどうすることもできません。


この列車は間も無く発車するだろうし、そうなれば隠れる場所なんてなくなってしまうからです。

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