第5話

「じゃ、俺は行こっかな」

「仕事か?」

「まさか」


原田の目がぎらりと光った。「お前じゃないんだから」


「参ったなあ」

俺は頭を掻く。マックで働いていないことは、すぐにバレてしまったようだ。


「俺はもっと楽しいことしにいくぜ?来るか?」

「いや、遠慮しとく」

「そうか」


原田は手にしたアイス棒を自販機の横のゴミ箱へ入れた。


「あれ、それって、ペットボトルとカン専用じゃなかったか?」

「は?じゃあなんでアイス自販機の横に置いてあんだよ。意味分かんねぇだろ。……おらっ、中身は全部これだぜ?」


原田がゴミ箱の上ぶたを蹴り開けると、そこにはアイス棒と紙が詰まっていた。かなり前から捨てるのを諦めているようで、かなりの量が押し合いをしている。


「ふーん。まぁ、俺はこっちのゴミ箱を使うな」

俺はピッ、とアイス棒を地面へ捨て、踏みつけた。

持ち手の上についている出っ張りが靴底から足を押し上げてくる。


「うん、分かった分かった。それじゃあな」

「おう」


原田は眠そうな目でそれを流すと、さっさと手を振って歩き始めた。

彼の背中を眺めながら、俺はしばらく沈黙していたが、やがて「お前も大工じゃねえだろ」と叫んだ。


「いや、日給4800円だね」

あいつは振り返って鼻で笑った。それを貫きたいらしい。


ここまでくると俺に言えることはない。

今度こそ最後まで原田が消えていくのを見届けた。


それから、ふと下へ視線を落とすと、俺が捨てた棒や、アイスを包んでいた紙、それと、ゴミ箱の赤い蓋が、白いコンクリートにへばっていた。

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