突厥碑文抄訳(稿)
犬單于 𐰃𐱃 𐰖𐰉𐰍𐰆
トニュクック碑文
トニュクック碑文意訳
●第一石碑
我はビルゲ・トニュクック、タブガチュの国で育った。テュルクの民はタブガチュに
テュルクの民はカンが居なかったので、タブガチュから離れてカンを立てた。カンを棄て、タブガチュにまた従った。テングリは斯くの如く言われたそうだ。
「我はカンを与えた。お前らのカンを棄て、お前らは従った。従った為、テングリは死ね!」
と言われたそうだ。テュルクの民は死んでしまって無くなった。テュルクとシルの民の地で体は残らなかった。荒野に残った者が集まって七百に成った。大半は馬乗りであった。一部は徒歩であった。七百の人を率いる大いなるシャドがいた。彼は「集まれ」と言った。集まった者に中に我がいた。ビルゲ・トニュクックは、「カガンを立てよう?」と言った。我は想った。痩せた牛と肥えた牛が遠くにいても、肥えた牛なのか、痩せた牛なのか、判らないであろう。そう考えていると、テングリが我に智慧を与えたので、カガンに促した。ビルゲ・トニュクック・バガ・タルカンと共に、エルテリシュ・カガンは即位し、南にタブガチュを、東にキタイを、北にオグズを多く殺した。我は賢者ビルゲにして将軍チャビシュであった。チュガイの北、カラクムに我らは蛮居していた。
鹿を食い、兎を食って、我らは蛮居していた。民の胎は満ちていた。周りの敵は、飛ぶ餌の如きであった。我らは
密偵の話はこうである。
「トクズオグズの民の上にカガンが立っています。タブガチュにクニ将軍を派遣したそうです。キタイにトンガ司馬を派遣したたそうです。この様に提案したそうです。まだ少ないが、テュルクの民の勢いは盛んである。カガンは勇敢で、軍師は賢明である。彼の二人が有らば、タブガチュを滅ぼすであろう。東にキタイを滅ぼすであろう。我らオグズを滅ぼすであろう。そこで、タブガチュは南側から襲い、キタイは東側から襲え!我は北側から襲おう。テュルクとシルの民の地の主を生かしておくな。さもなければ、我らが主を失ってしまうだろう」
この話を聞いて、夜も眠れず、昼も居た堪れなくなった。その後、我がカガンに進言した。このように進言した。
「タブガチュ、オグズ、キタイの三つが共に集まれば、我らは生き残れましょうか?我らが挟撃されたら、手薄な所を貫かれましょう。細い所は折られやすい。手薄な所が厚くなれば、貫き難くなりましょう。細い所が太くなれば、折られ難くなりましょう。東のキタイ、南のタブガチュ、西のコータン、北のオグズに向かって二三千の我が軍勢を送りましょう?」
このように我は進言した。
我がカガンはビルゲ・トニュクックの進言を採用された。「思うが儘に采配せよ」と言った。我はキョクオンを越え、乳牛と駄畜をウトゥケンの牧原まで率いた。トグラ河にオグズがやって来た。その軍勢は三千余り、我らは二千であった。矛を交えた。テングリが我らにヤルリクを下した。我らは敵を蹴散らした。奴らは河に落ちた。逃げる道で大勢が死んだ。この後、オグズは皆帰順した。我こそビルゲ・トニュクックは、テュルクの民をウテュケンの地へ帰来させた。ウテュケンの地に住めると聞き、南の民、西や北、東の民がやって来た。
我は二千を率いていた。我らには二つの軍勢があった。テュルクの民が始まってより、テュルクのカガンが即位しててより、山東や渤海へ至ったことが無かったので、カガンの命に拠り、我は出陣した。山東に、渤海に、我は至った。二十三の町を屠った。そこには廃墟だけが残された。
タブガチュのカガンは敵であった。オンオクのカガンも敵であった。頭数の多いクルグズの力ある可汗も我らの敵となった。その三人のカガンは相謀って「アルトゥンの牧原の上で会おう」と言ったそうだ。「同盟してて、東のテュルクのカガンに向かって戦しよう」と言ったそうだ。「それと戦わなければ、我らは何時どうなることやら……。そのカガンは勇敢で、その軍師は賢明である。このままでは、我々は何時か奴らに滅ぼされよう。我ら三つが組んで戦おう。滅ぼしてしまおう」と言ったそうだ。テュルギッシュのカガンはこう言ったそうだ。「我らの民は其処にいる」と言ったそうだ。「テュルクの民は乱れている。オグズは散っている」と言ったそうだ。
その話を聞いて、我は夜もまた眠れないまま、そこで考えた。先にキルギズを叩くべき、と我は言った。キョグメンへの道は一つだそうだ。雪で塞がれているらしい。この道を歩むなら、意表を衝けると我は言った。……案内人を探した。砂漠にアズの人を見つけた。
「私め自ら、アズの地の道を知っております」……そうだ。馬一頭通れる程の小道があるそうだ。そこを通れば至れるらしい。彼に問うと、馬で通れるそうだ。その道を進めば可能だと我は言った。我は考えた。我がカガンに進言した。
「我に軍勢で攻めましょう。出馬しましょう」
と我は言った。アク・テルメルの渡しで立ち止まった。雪に阻まれた。馬で登り、馬から降りて……邪魔な木を退かした。先導する者が踏み越え……イシュバラティを超え、ヨバル山を登った。我らは、十晩に亘って、山中を彷徨わされた。案内人が道を間違ったので首を括らせた。カガンは憂い乍らも、「急ごう!」と言った。
アニ河に我らは達した。其の川沿いに下って行った。我らは飯の為に馬を降りた。我らは馬を木に繋いでいた。我らは昼も夜も駆け抜けた。我らはクルグズの寝込みを襲った。我らは矛を以て奴らの目を覚ました。敵の軍勢が集ってきた。我らは矛を交え合った。我らは刺した。我らは彼のカンを殺した。我がカガンにクルグズの民は従った。敬った。我らは帰還した。キョグメンの野原を廻って戻って来た。
我らがクルグズから戻ると、テュルギッシュのカガンの所から密偵が戻って来た。話はこうである。
「東のテュルクのカガンを軍勢を送って攻めよう、と言ったそうです。もし攻めなければ、テュルクのカガンは勇敢で、軍師は賢明なので、何か事が起きた時、我らを滅ぼしてしまうだろう、と言ったそうです。テュルギッシュのカガンは、出陣しました。オンオクの民は残らず出陣しました。タブガチュの軍勢もいるそうです」
その話を聞いて、カガンは「我は家に戻る」と言った。カトゥンが亡くなったそうだ。「弔いをする」と言った。「お前は戦に行け」と言った。「お前はアルトゥンの野原に布陣せよ」と言った。「戦の頭はイネル・カガン、タルドーシュのシャドとして行け」と言った。カガンは、ビルゲ・トニュクックこと我に話した。
「この軍勢を指揮せよ」と言った。「お前の思うが儘にはなせ。我はお前に何でも話そう」と言った。「奴らが遣って来れば、自ずと情報が入るだろう。来なければ、捕虜を捕らえて聞き出せ」と言った。我らはアルトゥンの野原に布陣した。
三人の密偵が戻って来た。話は同じである。
「テュルギッシュのカガンの軍勢は出陣した。オンオクの軍勢も残らず出陣して集結した。ヤリシュの野原に集結しようと言ったそうだ」
その話を聞いて可汗に報告した。その返信が来た。「お前は布陣していろ」と言った。「先鋒は見晴らしの良い所で待ち、未だ襲うな」と言った。ボギュ・カガンが、我にそうさせる様、仕向けたらしい。我もといアパ・タルカンについて、裏で密かに話したそうだ。
「ビルゲ・トニュクックは悪い奴、拗けた奴よ。もし、我が戦に出ると言ったら、お前は頷くまい」
この話を聞いて、我は出撃した。アルトゥンの野原の道を越えた。エルティシュ河の渡しが無い所を我らは渡った。我らは夜通し進軍した。ボルチュに明け方に辿り着いた。
●第二石碑
捕虜を捕まえて聞き出した。その話はこうである。ヤリシュの野原に十万の軍勢が集結している話した。その話を聞いてベグ
「我こそビルゲ・トニュククはアルトゥンの野原に来た。エルティシュの河を渡って来た。来るのは困難だ。奴らには思いもよるまい。テングリ、ウマイ、聖き
と我は言った。我らは攻め寄せた。我らは射かけた。二日目に多くの敵が来た。火の如き勢いで来た。我々は矛を交えた。我らより、敵の軍勢は多かった。テングリのヤルリクの御蔭で、多勢に無勢と言っても、我らは恐れなかった。我々は矛を交えた。タルドーシュのシャドの援軍も加わった。我らは射かけた。奴らのカガンを捕まえた。奴らのヤブグーとシャドを殺した。五十人の男を捕まえた。その夜に、我らは夫々の部族に使いを出した。その話を聞いて、オンオクのベグ
我れは更に戦を続けた。我らも後を追った。インチュ河の渡し、ティンシ・オグリ・アイトグマ・ベンギュリュグ・エク山を経て、テミル・カピグまで至った。我らは、そこから戻って来た。イナル・カガン…… up, taghqa, täzik …… toqursin …… その地のアシャの頭を戴くアルダックの民が帰順した。その日に到着した。テュルクの民は、テミル・カピグのティンシ・オグリ…… ティンシ・オグリ・アイトグマ・ベンギュリュグ・エク山に着いたが、主は亡くなっているようだ。その地は、我こそビルゲ・トニュクックに引き渡された為 …… 赤い金、城い銀、赤い牛、嬉びが齎され、憂いが無くなった。イルテリシュ・カガンの知恵……国の為、タブガチュと十七度戦い、キタイと七度戦った。オグズとは五度戦った。そこで軍師として、我も常に伴をしていた。敵の前でも、また常に伴をしていた。イルテリシュ・カガンは神上がられた。テュルクのボギュ・カガンに、テュルクのビルゲ・カガンに……カプガン・カガンは二十七歳で……であった。我はカプガン・カガンを即位させた。夜も眠らず、昼も座らず、赤い血を流し、黒い汗を走らせ、我は国の為に尽した。遠くに戦いにも行った。我は砦や見張りも設けた。敵を帰順させた。我がカガンの軍勢も遣わした。テングリのヤルリクに拠り!このテュルクの民に武装した敵を寄せ付けなかった。結び付けた馬を走らせた。イルテリシュ・カガンが頑張らなければ、続いて、我自らが頑張らなければ、国はまた、民はまた、無くなっていたであろう。カガンの頑張りと自らの頑張りの為、国はまた国となった。民はまた民となった。自らは老いてしまった。偉くなってしまった。どんな地でも、カガンを戴く民に……我の如く有れば、どんな憂いがあろうものか?……テュルクのビルゲ・カガンの国の為に我は書かせた。我ビルゲ・トニュクックが。
イルテリシュ・カガンが頑張らなければ、無くなっていれば、我自らビルゲ・トニュクックが頑張らなければ、カプガン・カガンとテュルクとシルの民はその地で滅び、また民も、また人も、また主も滅んでいたであろう。
イルテリシュ・カガンとビルゲ・トニュクックが頑張ったため、カプガン・カガンとテュルクとシルの民は営めるのである、この如く。
テュルクのビルゲ・カガンはテュルクとシルの民を、オグズの民を養っておられる。
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