第11話


 決めたよ。決めた。


ウソ偽りをとっぱらって、表面上だけニコニコするのはもうやめだ、

それに、性に合わないことを続けたところで心の底から楽しめるなんてことはまずない。

「そんなの常識だろ」、そんな声がどこかしらから聞こえてきそうな気もする。

ただその『常識』を実行に移せている人はことのほか少ないよな。

と、勝手に考えている。


つーわけで「はい! じゃあこれからが本当の僕でーす!! よろしく!」なんてことはまぁ、言えるわけないけど。

『コミュ障』で『根暗』は俺を構成する要素、しかも比重はそこそこある。

急激なキャラ変、

しかもこの時期になんの前触れもなくそんなことしようもんなら――。


おおかた予想はできるな、これはまだやらない方がいいか。


脳裏によぎったのは『KD』

と後ろ指をさされ、笑われてしまう未来。

それだけならまだいいのだが、この手の場合、取り巻きがあることないこと吹聴して回る危険性がやや高めだ。あまりそこに足を突っ込みたくはないな。


当分の間は様子を見よう、

クラスの人間関係がある程度出来上がってきたタイミングを見計らって『本性』として表すとしようか。固まりつつある『評価』であればそう簡単に手のひら返しということもできまい、『薄情』だと裏でささやかれるのは相手側にとっても痛手だしな。


表面、クラスでは『静かなキャラ』な一方、

仲のいい奴らといる時は『ギャーギャー騒ぐ』。


 これが本来の『オレ』だ。仲間がいないと強くなれないスイミーのような生き方は一部の人間からすれば、タチの悪い事この上ない。

だがしかし、一つ言わせてもらうとするなら、そもそも大勢の前で人目を気にせず騒げるような人材は俺の経験的にも、客観的に見ても確実に『少数派』に入る。

まぁ、クラス内の権力がこいつら一部の連中にいってしまう

『中央集権体制』なクラスが大半なのだが。






 ――入学してから二週間が経った。


まだ完全変態は遂げていない。

あと今、オレは長野県にいる。『勉強合宿』なるお泊りイベントのためにな。


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とある県立高校の日常。 遠藤幸次 @HardEnd

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