第10話 覚醒の近藤



 さぁ次のイベント、『校舎案内』っていったって

今のような悩みに悩みまくってる状況では耳をかたむける気にもならない。

当然、周囲の人間に話しかけるなんてことも起こりえないので、無意識ぼっち。

はたから見れば『思想にふける学者』、の究極にうさんくさいバージョン。


 終始、『心ここにあらず』。

教科書の購入以降のことはなにひとつ覚えていない。

「じゃあな」の言葉を交わしたのかすらも危ういほどだ。


帰宅した後も、今後の路線ろせんについては悩みが続く。


バカバカしいくらいに考え、案を出してはあらを見つけて却下。

俺の理想の高校生活とはなにかを問いただして軌道修正きどうしゅうせいののち、再度思案に入る。


こんなことをしていても建設的な案など何一つ出るわけがなく、

同じルートを繰り返し通っているだけの堂々巡りが続いた。



もう、なんというか、正直どーでもいい。


最終的にいたった結論は結局これ。

そもそも頭をつかって真剣に何かを考えるのが苦手な性分しょうぶんである俺はもう、「吹っ切れる」以外の答えが見つからなかった。

思い返してみても、中学時代のもろもろの考えはただの客観的な分析であって、そこから解決策を見いだせているわけではない。


つまるところ、すごく単純に俺は『おバカ』なのだ。


今更ながらようやく自覚をする、いや、薄々は気づいていたのだが『バカ』という言葉は自尊心じそんしんの高い俺にとってはあまり気持ちよく受け入れられるものではない。

まぁでも、認めないで悩み続けるほうがもっと『バカ』であることは自明。


ならいっそ己の『欲求』に従って、俺本位に生きてしまおう。

人間関係? うるせぇよ。自己中に生きてなんぼのもんじゃい、ってくらいのスタンスでもう良いじゃないか。


「あぁああああああああ!!!!!」


決めたもう。『バカ』になる、大好きな『ド下ネタ』も好き放題に連発する。

モラルはない、品格もない、でも本来の俺がそうなんだから仕方ない。

自分が変わるんじゃなくて周りに合わせてもらおう。

合わせたくない奴らはどこへでも行ってくれ。



クソしょーもない議論に時間を費やしまくったあげく、

3秒くらいで出せそうな偏差値4レベルの解を導き出してこの問題を終わりにした。



あぁもういい、好きに生きる。



こんな馬鹿正直な発想が、これからの人生を大きく変えるほどの影響力を持つだなんて、当時の俺は想像もしていなかった。



変化のルーツ、昆虫でいうなれば『』、

その過程を歩み始めた記念すべき日になった授業前日。



『俺中心』で『下品』で『勝手』な生活、

青春がついに輝き始める。




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