一年生 春
第2話 入学初日。
2012年4月、俺は高校生になった。
入学祝で両親に買ってもらったおニューの『iPhone 4s』をポケットに、
俺は通学路の道を行く。
高校から自宅までは電車・徒歩の時間含めて40分ちょっと。途中、
今日は自宅の
初日の
すると、
「おっすー」
同じ黒の学ランに、ぴかぴかのローファー。そして右手にはきっと入学祝で買ってもらったのであろうスマホ、と言っても俺とは違う『Android』。
そう、こいつが待ち合わせをしていた友人だ。
名前は
元々こいつとは別の中学だったが、たまたま通っていた塾のクラスが同じということでちょいちょい話をするくらいにはお互いを知っている。
まぁ正直言って、これといって仲が良いということではない。ウマが合うということでもない。
ただ『入学式ボッチ』、これだけは避けたいという気持ちが双方にはあったのだろう、
「お、ういっす」
軽く言葉を交わしたのち、改札を超え、さっそく電車に乗り込む。
車内は通勤中のサラリーマンに、俺らと同じ学生でギュウギュウだ。
特に本町と会話をすることもなく、二人ともずっとスマホに視線を落としていた。
時々顔をあげては窓から見える風景をなんとなしに見つめる。車内の空気は
電車を降りて、俺と本町は高校への道のりを再び徒歩でいく。そのあいだも、特に目立った会話があるわけではない。
「クラス同じかなー?」とか、「部活何入るよ?」とか。
――そして、
見えてきた。
あの門だ。
俺があの日、『居場所』を感じたヤド高の門がもうすぐそこにある。
門の入り口右側には『57期生入学式』と大きな立て看板。
ついに来たんだ。嘘じゃない、俺はこれからここに通える。
ウキウキする気持ちを抑え、スカしたような、どこか気取ったような態度を
「入学おめでとーう!!!!」
「バスケ部募集してまーす!! あ、マネージャーも!」
「オラァ! ハンド部入るやついねぇのかコラァ!!」
――門を通り抜けた瞬間《しゅんかん》、全てが違った。
それまでの新入生たちがそわそわしながら歩いていた、それなりに静かな感じとは全くもって
いや、もはや『戦争』なんて極端な表現をした方がいいのではないだろうか。
一年生が歩く列に
入学式のつるピカ一年生たちは、
その
そう、今日だってお祭りだ。
朝いちばん、こんな時間帯からギャーギャー大騒ぎできるのも『ヤド高』たる
俺と本町は勧誘の波に揉まれつつ、一年生のクラスが入っている四棟、学校の一番奥手にある校舎へ向かう。
絶え間ないビラ責めから、「入らねぇと――‼」というようなただの暴言まで。
ありとあらゆる方向からとかく新入生を獲得しようとする先輩方の熱意を斜に構え、『スカし』て
ノリがいい奴ならこの段階で既に幾人か友達が出来そうなもんだが、ごあいにく、
俺はそんなタチじゃあない。矛盾するかもしれないが、『目立つ』ことが好きか嫌いかと聞かれれば好きではあるんだけどな。
さりげなく紙一重の躱しを連発させた俺は、やがて4棟前へ。
後ろには本町もしっかり
お前もか……。
お前も『スカし』を使いこなすのか本町……。
まぁいい、というか重要なのはこの後だ。
高校生活の最初を占う『クラス分け』、気が合う奴らがいればいいのだが。
さぁ。俺はいったい何組になるのかなぁ。
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