第4話 考察と喜び

 ───俺は入学式で、この学校についてこう説明された。


 思い出すのは校長の言葉だった。


『カルディナ学園は大陸に存在する国々と日本が協力してジェスト王国を軸として設立された学園である』


 これは、俺達入学生やというか世界中にリークされた情報だ。


 そしてこの次から、俺達が知らなかった情報。


『主な学園目標は二つである。一つ目、それは日本から交流を始め、この交流上で世界中に自分達が安全で利口な者達と主張をしたい』


 つまりこれは、異世界側は世界中の国々と交流がしたい。という真意だ。


 詳しく言うと、交流をしようと異世界側は一年前から関係を図ろうとしたのだが一向に周辺の国々から危険視されて取り合ってくれなかったそうだ。

「なら」と、異世界側は世界中に大々的に日本と異世界側の代表国のジェスト王国が共同で学園都市を作ったことを発信し、日本人と異世界側の人を交流させ生活上で自分達が安全で利口な人達という世界中に主張をするために作ったのがこのカルディナ学園存在理由の一つと校長直々から入学式で声明された。


 そして二つ目の理由。


『条約の元で、こちらの職業全般を日本人が就職できるように教育させ、またこちら側の人達も同じように教育させたい』


 と、校長は二つの目標をいい終えた。


 つまり、異世界側の職業に日本人も就職できるようになったということだ。


 俺からしたら職業の幅が広がり、就職しやすくなった事は大変嬉しい限りである。


 またこの学園で就職できるように教育してもらうのだから万々歳だ。


 ここまでは良かった。


 でも次から、驚くべきことが校長から堂々と宣言された。


『日本人の諸君。入学おめでとう。先ずは試験に合格したことを讃えよう。

 さて、これから君達は未知の世界を体験する事になるだろう。

 こちらでは日常で使っているが君達の世界にはない魔法の事や、この大陸での風習、歴史、技術等様々なことが君達の初体験となるだろう。あと、この学園の事も。

 ここカルディナ学園の目標は先ほど話したのだから......次は制度について話そうと思う。

 日本人諸君の学園では皆平等に扱い、学び、そして社会に貢献できるような人間を作り上げてきたのだと私は聞き、大変驚いた。

 日本が執り行ってきたこの制度の凄いところは皆平等に扱っているところだと私は思う。

 この制度は日本人の素晴らしい人間性が無いと成り立たないものだ。

 そして、この制度を昔からずっと続けてきたということは......日本人は日本人という誇りを持ち続け、謙虚に生きてきたという証拠になっている。

 私は改めて、日本人諸君の人間性に驚かせられた。

 大変この制度は素晴らしいが......カルディナ学園では日本ではなく、こちらの世界の制度に従うことになっている。

 こちらの制度は日本と同じように昔から執り行ってきたものだ。───』


 校長はそこで一旦言葉を切り、入学生達のすべての視線を自分の視線に絡ませるようにゆっくりと見渡した。


 その数秒間の間は、俺達入学生に今から当て付けをするような雰囲気が感じられた。


 全員が息を呑み、校長の言動を待った。


『───しかし残念だが......日本の制度とは真反対な制度となっている。先に言っておこう。こちらの制度は実力主義だ。

 学力、姿勢、態度......そして戦闘力の四つが学園での評定となっており、序列が存在する。

 平等な制度のもとで学んできた日本人の諸君にはすまないがこちらの制度に慣れてもらう必要がある。

 三年間、日本人諸君はこの慣れない環境下で生活を送らなければならないため、最初の一歩が出遅れてしまうことになるが、条約の下で決まっていることに学園が逆らうことができないのだ。

 無責任なことを言うだろうが、頑張って食らいついてほしい。因みに、序列の順位が上がるほど学園からの対応は良くなるだろう。

 ただ序列が低いとどうしても優先度が低くなってしまう。

 入学生の諸君。これからの学園生活では互いに切磋琢磨していき、時には協力し、時には争いながら自分が持っている特徴という武器をより鋭くしていってほしいと思っている』



 その言葉で校長からの言葉は終わり、会場は静寂に包まれた。


 拍手はなく、生徒達は俺を含め、ただ呆然と校長が席に戻っていく姿を見つめているだけだった。


(結局、校長は名前を公言しなかったし......なんだかなぁ)


「序列......か」


 自分の部屋のドアを開け、俺はいろんなことを思い出しながら持ってきたポテトチップスを開けて、早速ありついた。


「序列があったら色んなトラブルの原因になるはずなのに......なんで損なことするんだろうな......」


 と、首を傾げながら今日あった入学式のことを気持ち悪く思った。


「昔からの制度......つまりあっちの学園では序列があるのは普通なことなんだな。まぁ、俺は中の中ぐらいの序列だったらいいかな......」


 そう苦笑しながらポテチを口のなかに放り込み、相変わらずの美味しい味に思わず頬を緩ませる。


「楽しそうとは思ってるけど、怖い気持ちはあるな......」


 カルディナ学園は実力主義だと言うことを今日校長から直々に言われただけで、まだ体験はしていないが、これからカルディナ学園で生活を送るのは日本人にとってハードルが高いのが予想できる。


「うーん......───あ......」


 考え耽っていると、不意にどハマりしている現在進行中のRPGゲームのことを思い出した。


(そういえばまだ中盤の難関ステージクリアしてなかったな。実は解決策が二つほど浮かび上がったから早く実践したかったんだよな!)


「よし接続完了。あとはこのコード繋いでっと......これで出来るな」


 テレビの前で白い長方形状のゲーム機を出して、起動する。


「まぁ......ゲームしてこの変に暗くなってる感情を抑えるか」


 俺は入学式で言われたことの重要な部分をメモに書き留めてから、憂いなくゲームに耽るのだった。


 

*****************************



「翔兄ぃ。お茶とって」


「お、おう......」


「......」


(やっべ......ゲームしてたらもう2時(午後)だったか......30分くらい食うの遅れちゃったな......結菜に悪いことした......)


「あの......ごめんな結菜。食べんの遅れて......」


 結菜はその言葉に顔をプイと俯かせながらこう言った。


「別に......翔兄ぃには翔兄ぃの事情があったんでしょ」


「い、いや......その......」


(事情ほどじゃなくてゲームしてたら夢中になって気づかんかっただけだぞ......でもこれ以上謝るとなんか逆に怒らせる気が......)


「......」


「あの......怒ってますかね?」


 明らかに眉を斜めにしてご立腹の様子な我が妹。


 また顔を俯かせながらこう口にする。


「......怒ってません」


「......」


(うん。結菜オコテイルだなこりゃ......このまま気まずく食べたとしてもお互い苦くなるだろうし、何より俺の心の方が持たないな)


「......」


 今一度結菜の顔を見ると、あからさまに顔を俯かせていた。


 兄として妹にそんな態度とられると本当に心苦しいが、必死に顔を俯かせている妹の姿をまた可愛く思ってたりする。


(ここは事実を言って謝るか......悪いことしたときは素直に事実を述べるのが一番解決するからな)


 テレビもつけないで静寂のなかの昼食は本当に言い出しづらい。


 しかも一時的ではあるが、関係が悪化してると尚更だ。


 緊張するが、ここは兄として言わなければなるまい。


「えーっとだな......事情という事情じゃなくて......その言いづらいんだけど......ゲームに夢中になってただけだったんだ......せっかく作ってもらったのに本当にすまなかった」


「......」


「でも許してくれとかは思ってないよ。許すのは結菜が決めることだし......何より、悪いことをした俺にそんな許しを乞うなんて大層なことは出来ないから」


「......」


 結菜は依然としてサラダを食べている。ようはだんまりを決めているということ。


(やっぱり......今日は話すこと出来ないか......)


 妹と話せなくなると心が痛む兄属性持ちの俺はそう確信し、最後の最後に残しておいたご飯とハンバーグを一気にかけ込んだ。


 絶妙にスパイスをきかせるデミグラスソース。隠し味なのかトマトが少量入ってさらに味にコクが増し、肉厚なハンバーグにマッチする。


 ハンバーグの真ん中には、なんとチーズが入っていた。


 妹のハンバーグを見ると、それにはチーズが入っていなかった。


 俺がチーズが好きなのを知っている結菜が、わざわざ俺のだけをハンバーグからチーズINハンバーグにしてくれたのだろう。


 そんな心優しい妹にゲームが忙しくて30分作ってくれた昼飯を放置をした糞兄貴には天誅が下ってほしい。


 結菜が作ってくれた料理を味わいながら、喜びと自分に対しての怒りを噛み締めている昼御飯は何とも凄く美味しいとは感じられなかった。


 本当に美味しいのだが、雰囲気が最悪だと味が落ちるのが今ここで証明された。

 

(これからちゃんとメリハリをつけていこう)


 箸を置き、空になった茶碗とハンバーグがあった皿に手を合わせてそう意気込む。


「ごちそうさま」


 椅子から立ち上がり、食器を綺麗に洗剤で洗ってタオルでよく拭いた後、食器棚に元あった場所に置いた。


 俺は食器を洗ったときに跳ねた水滴がパジャマや頬にくっついているのをハンカチで拭き取りながら、リビングを後にしようとドアノブに手をかけ、最後に言っておきたかったことを口にした。 


「結菜、チーズINハンバーグ本当に美味かった。作ってくれてありがとうな。今度は俺が結菜の大好物の肉じゃが作ってやるからな......あ、そうだ。隠し味のトマトのことなんだけど、あれのお陰でコクが増していい感じにデミグラスソースに合ってたよ......じゃあ俺サッカーの練習あるから」


 そう言ってドアを開き、俺は準備があるため自分の部屋に戻ろうと急いで階段を駆け上がろうとしたとき、閉まりかける扉の向こうに座っていた結菜の口が微かにこう動いた気がした。


(バ......カ......?)


 果たして本当にそう言ってたのか分からないが、結菜はそう言った気がした。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>



「───祐吾!」


 そう叫んだ後、センターサークルより少し前の逆サイドが空いてるスペースにロングパスを上げた。


 右のFWである裏を抜け出した川端かわはた 祐吾ゆうごに見事パスが通り、持ち前の足の速さでそのままコーナーまで上がっていった祐吾は低弾道クロスを真ん中のMFである宮前みやまえ つとむに上げる。


 惇はDFの前に体を滑り込ませ、上げられたクロスを強引にゴールへ向かって流し込んだ。


 しかし、くしくもスライディングでシュートコースを阻んだDFの脛に当たり、ボールはゴールの上を超えて、ラインを越えた瞬間。 


ピーピーピー!


 と、三回のホイッスルがグランド上に鳴り響き、チーム内対抗戦はBチームとの試合で五得点の差をつけてAチームが勝利し一位Aチーム。二位Bチーム。三位Dチーム。四位Cチームという結果で幕を閉じた。


───俺が現在所属するチームの名は横浜S・マリンズ。

 日本のプロサッカーリーグの頂点、Aリーグに所属するプロサッカーチームの横浜S・マリンズの下部組織だ。

 リーグ優勝回数は上位に位置する名門チーム。

 監督はイタリア人をとっており、今時で言うのならばガチ勢だ。


 俺はそこで左サイドバックとしてプレイしているわけなのだが、やはり妹との事が頭から離れなくて集中できなかったため、パスミスを二三回ほどしてしまった。


「いかんな......試合に勝てたとしても何だか気持ちが優れん」


(やはり俺にとって結菜は心の防波堤だったのかもな......)


 と、苦笑しながら水筒をがぶ飲みしていると不意に声がかけられた。


「翔。ちょっと」


「......? あ、佐々木コーチ。何か用ですか?」


「あぁ。用はあるんだが、ここではちょっと言いにくいことなんだ」


「分かりました」


 首を傾げながら承諾し、佐々木コーチの後を追った。


「───翔! ナイスパスだったぞ!」


 グランドから佐々木コーチが案内する所まで移動する途中、祐吾が俺の元まで走ってきて明るい声でハイタッチを促してきた。


「ありがとう」


 俺も促されたハイタッチを快諾し、突き出された手に思いきり手を合わせる。


 パン!


 という勝った後に聞くと気持ちのいい音が鳴り響き、互いに笑い合った。


「じゃあ俺、先に帰ってるわ」


「おう。またな」


 祐吾は佐々木コーチと一緒にいる俺を見て何かあるんだと察したのか、早々に走っていった。


 そこから一分後にグランドのはじに設置された大きなテントにまで案内された。


(確かここって......監督がいる場所だったような......)


「監督、連れてきました」


 佐々木コーチがそう言うと、奥から六十代ぐらいの白髪をオールバックで固めた中年男性が現れる。


「───ゴクロウサマ」


(へぇ......案外日本語喋れるんだ)


───横浜S・マリンズ下部組織の監督、ジェラーム。

 ヨーロッパでも数々のチームを優勝に導いた鬼才。

 一度日本代表の監督をしたこともあり、日本でも知れわたっている───


 イタリア人である彼が、日本語を喋れることに驚いていると 


「□□□□□□。......□□□□□」

「調子はどうだ石崎 翔君。......毎日君のプレーは見てて面白いよ」


 突然イタリア語で話し出すジェラーム監督に内心また驚きながら、そのイタリア語を隣に居た人が翻訳した。


「光栄です」


 俺は翻訳された言葉に返答し、苦笑する。


(あ......イタリア語にチェンジするのね?)


 最初の日本語はなんだったのかと。


「□□□□□□□□ □□□□」

「今のところ君に言うことは無いよ。その調子を維持してくれ」


「はい。努力します」


「□□□□ □□□□□□ □□□」

「それで君を呼んだのは二つの案件があるからなんだ」


「なんでしょう」


「□□□□□ □□ □□□□□□□ □□□□□□□□□ □□」

「一つ目は君の今のポジションであるLSB(レフトサイドバック)からOMF(オフェンシブミッドフィルダー)に転向する気はないかね?」


「......理由をお聞かせいただけますか?」


「□□□□□□ □□□□□ □□ □□□□□□□ □□□□□□□□□□□□ □□□□□□ □□□□□□ □□□□ □□□ □□□□□□ □ □□□□□□□□□□ □□ □□□□ □□□□□□□ □□□□□□□ □□ □□ □□□□□□□□ □□□□□......□□□□□□□□」

「君は試合中、よく周りが見え視野が同年代のなかでも恐ろしいほどに広い。攻撃の組み立て行う際のパスの精度も高水準だ。スルーパスを今日もディフェンダーながら何回も成功させ、その度にチャンスが生まれている。トラップのクオリティ、ボールの処理、足元の上手さ、一対一デュエルの強さ、守備意識の高さ、足の速さ......そして日本人には少ない高身長というアドバンテージ。選手に求められる殆どの能力を君は高水準で満たしている。チャンスメイカーとドリブラーの二拍子が揃っている選手など中々居ない。そんな選手にディフェンダーをやらせているのは才能を潰しているのと同じだ。私は君のようなこれから咲き誇る一輪の花を潰させたくない。勿論、君の判断に任せるが......私は君に中盤でチームの支柱となって活躍してほしい」


「え......」


 俺はそう言われた瞬間、何故か父が10番を背負ってサッカーをしている姿の写真を思い出す。


(確か......10番ってここのポジションだったよな......)


 監督に言われた言葉は、サッカーをやってきて初めて言われた言葉だった。


 こんなに評価してくれていることに、気分が当然のように高揚する。


 しかも監督から、チームの首領(ドン)に直々に言われたのだ。


(こんな誘い......)


 ポケットのなかに手を突っ込み、思いきりガッツポーズをした。


(断れるわけありまへんっ......!)


「是非......やらせてください」


 人生最大の速度で腰を思いきり90度に折る。


「□□□□□ □□ □□□」

「それは良かった。では早速だが明日からMFの練習に参加してくれ」


「はいっ!」


(今の背番号は5番......フフフ......10番になれるように頑張るけんねっ!)


 今すぐ帰ってベットの上で魚のように跳ねたい気持ちを抑えながら、二つ目の案件が言い渡される。


「□□□□□□ □□ □□□□□」

「二つ目の案件だが、これも強制ではない。しかし、名誉なことだ」


「名誉......」


「□□□□□ □□□□□......───」

「名誉なこと、それは......────」


「───えっ?」


 俺は監督の言葉に仰天した。


****************************



「いらっしゃいませ」


 コンビニの店員の明るい声が自動ドアが開いた時に鳴る電子音と重なる。


 俺は飲み物が冷やされているガラス張りの大きな冷蔵庫の前で足を止めて、お茶を取り出した。


「はぁあああ......」


 ため息ではない、嬉しさのあまりにでる感嘆とも言うべきか。


「やべーよ......まじで。ホンマにヤバイよ......あぁ......ヤバイ」


 同じ言葉を繰り返しながら幸せオーラ全開の緩んだ表情のままレジに向かう。


「いらっしゃいませ。───ピッ。155円になります」


「はい」


「一万円お預かりします。9845円のお釣りです」


「───チップです......受け取ってください」


 突然言われた言葉に、驚愕する女子高生。


「え......い、いやっ! ダメですよっ」


 同年代だろうか。ポニーテールで黒い髪を結んでいる女子高生だ。


 制服姿にコンビニのロゴが貼られた上着を着ている。


 俺は余りの心の高揚感に、何故か自分の今の行動が恥ずかしく思えず、逆に益々感情が上がる。


 四枚の野口さんと一枚の樋口さんを綺麗にたたんで、レジに立つ女子高生の手に優しく乗せた。


「受け取ってください......おっと......あなたの手、冷えてますよ? きっと朝から働いてるのでしょう......まだ4月の初旬ですから寒いんですよ......っと───はい、カイロです。実は自分も冷え性なんですよ。あと二枚ありますし、一枚差し上げますよ」


「あ......えと......あ、ありがとうございます......」


 女子高生は笑顔で渡されたカイロを呆けた顔で受けとった。


「で、でもお釣りは受け取れませんよっ......」


「......そうですか。分かりました。では、俺はこれで失礼します。また来れた時にはあなたが居ることを願います」


「は、はい......あの、本当にカイロ、いいのでしょうか?」


「大丈夫です。自分より手が冷えてる人なんてあなたが初めてだったので......レジに立ってるときでも袖に手を隠していて寒そうにしてたのを見てましたから」


 女子高生はその言葉に目を少し見開いた後、それまで困惑ぎみだった表情に花を咲かせた。


「............ありがとうございました」


 それは、先程とは到底異なる、心がこもった礼だった。


「では」


 女子高生は見知らぬ青年から貰ったカイロを両手で大切そうに包み込みながら胸に当てて、こう小さく呟いた。


「あったかい......」






 コンビニから直行で帰宅した俺は勢いよく玄関のドアを開けた。


「ただいま!」


 そう挨拶して早々に靴を急いで脱いで綺麗に並ばせたあと、自分の部屋まで駆けた。


 階段を急いで駆け上がる音は自分でもうるさいと思ったが、今はそんなのどうでも良かった。


 自分の部屋の扉をまた勢いよく開けて、そのままベットにダイブする。


 そして、バックのチャックを開き、異様に綺麗な白い紙を取りだし、高らかに持ち上げた。


 証明に照らされる紙を見た瞬間、一気に心が爆発した。








「───日本代表になったどぉおぉおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」  


 そう。


 コンビニでのキザな行動は、全てこれが理由である。


 石崎 翔。


 人生で二回目のユース日本代表になったのだった。 

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