第六章

第39話 第六章 1-1




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シンルは微睡まどろみの中にいた。

ふと、顔を上げると白いきりの向こうにルツの背中が見える。

灰色の服は今にも霧に溶けてしまいそうだ。

シンルは慌てて駆け寄ろうとして、その場で派手に転んでしまった。

足下を見ると、白い石の墓標ぼひょうがある。

ところどころ欠けていて、小さく丸い緑色のこけが散っていた。

少しばかり年季が入っていそうだ。


そのまま視線をずらし、墓に刻まれた名前を何となく見たシンルは息を止めた。


―ディータ


きりわずかに流れ、視野が広がる。

気がつくと真横にも同じ形の墓があった。

湿り気の多い空気は吸い込んでも吸い込んでも胸を苦しめるばかりだ。上手く呼吸が出来ない。


シンルは隣の墓に飛びついた。そこにはルツと書いてあった。


強い風が吹いた。

目をぐっと瞑る。

墓石を胸に抱いて耐えた。

ようやく風がおさまった頃、目を開けると視界は晴れている。先ほどの風が白い霧を攫って行った様だ。


シンルは気が付いた。自分が座っていたのは、墓地だ。

周囲には沢山の墓標があった。

何十、いや、百を超えている。

石造りなのは二つだけで、他は木の板を地面に突き刺しただけの簡素なものだった。


-これはみんなのお墓だよ


どこかから声がした。


-最初に死んじゃったのは二人だった。それからは、あっと言う間でお墓を丁寧に作る時間が無かったんだ。思い出した?


波の音が聞こえる。そう思ったとき、ふと目が覚めた。

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