第37話 第五章 2-1
2
「シンル?」
姿が見えないシンルを探し、林を抜けたザーレが見た景色は神秘的だった。
夕焼けに輪郭がぼやける小さな背中を見て沸き起こる、泣きたくなる程の感傷。
理由は分からない。
懐かしさ……だろうか。何と無く、あの子に似ていたからかもしれない。
「綺麗だ……」
知らないはずの風景に懐かしさを覚え、帰りたいと思う。この気持ちは何だろう。
けれど、長く浸ってはいられなかった。ザーレはすぐに気がついた。右の林に誰か居る。
一瞬の風が吹いた後、ザーレはシンルに走り寄った。
「ザーレ?」
どうも相手の様子がおかしい。肌に感じるこれは……
―殺気だ
次の瞬間には互いの得物がぶつかっていた。
ザーレの短刀と青年の長剣。
絡み合って滑り、空気を引っ掻いて震わせる。
シンルの姉を攫った連中だろうか。
最初の
再び、二度、三度絡み合う。
相手の身体を柳の様にしならせ長剣をぶんっと大きく振り回す動きには、型も何もあったものではなかった。
「左利きか! やりづれえ。突然なんなんだ!」
突きの動作は一切含まず、完全に首をなぎ払うことだけを狙って、明確に、単純に、男はザーレを殺しにきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます