第五章

第35話 第五章 1-1




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港には沢山の屋台が並んでいた。美味しそうな食べ物の匂いが混じり合って、長旅を終えた人々を出迎える。

店先に下がる油燈あかりが夕闇の向こうまで繋がっていて、あまりの町の広さにシンルは唖然とした。


地面には何処までも平らに削った石が敷き詰められていて、人が多く通るところは削れてくぼんでいる。

土が剥き出しになった地面は見当たら無かった。そのために違いないが、風が吹いても砂埃すなぼこりが立たない。


そこは素晴らしいのだが、自分の父の様に足の悪い人間には石の地面は厳しいかもしれないとシンルは思った。


後は、とにかく人にぶつかる。それから、身分の低い人々も思いの外大勢居た。

それから、それから……。

目が回りそうだ。


「もう三のくるわの城門は閉まってるな」


ざわめきの中、少し声を張ってザーレは言った。


「三のくるわ?」

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