第31話 第四章 1-3
「えっと……」
「はぁ……」
ザーレは
首だけでシンルを振り返って言う。
「お前な、理由覚えとかなきゃ意味ないだろ。一番大事なのは『何でそれが必要なのか』っつう、理由の部分なんだぞ」
「いやぁ、だってさ」
そうこうするうちに男たちはザーレの目の前に迫っている。
酒瓶と同様に陽光の
引っ張られたザーレも無理やりその場に座らされる。
立っていたもう一人の男が、シンルも座るようにと仕草で促してきた。
どかり、と真ん中に酒瓶が置かれ、男たちは名乗り始める。
吐く息が酒くさいのは、その顔の赤さから見て当然と言えた。
話は自然な流れで互いの身の上話になる。よっぽどシンルに男たちと会話して欲しくないのか、ザーレは苦虫を噛み潰したような顔をしながら一人で質問に答えていた。
身の上話と言えど、もちろんレブロの紫の件は伏せている。
ただルツの話題が深掘りされて来るとシンルも黙っていられなくなって、いつの間にか会話の主軸はシンルに移っていた。
中年らしい男の一人が言う。
「悪いなあ。力になれなくて。姉さん、きっと見つかるさ。こんな可愛い坊主が心配してるんだから」
「あ、ありがとう。おじさんたちは何のために王都に行くの?」
「ああ。王都に絵描きの知り合いがいてなあ。頼んでた絵が完成したらしいから礼を言いがてら取りにいくのさ」
「へえ。誰の絵か聞いてもいい?」
「もちろんさ。あの、盲目の殿下だよ」
それは誰、とシンルは眉を寄せた。
殿下と言うからには高貴な人物に違いないのだろうが、わざわざ絵にして飾りたいと思う様な何か凄いことをした人なのだろうか。
わずかに首を捻ったシンルに男は言った。
「はは。やっぱり坊主はアナベル=リリィ殿下の話題の方がいいさな」
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