第四章

第29話 第四章 1-1

***



シンルとザーレは、予定より一日早くロブサールに到着した。

四日後に王都への船が出ると知り、乗船の手配をした後はそれまでの日にちを全てルツの捜索にてることに決めた。


ロブサール港から船が出るまでは何処どこの宿も一杯だ。ザーレの顔を気に入った宿屋の女将さんに物置小屋を借り、そこを拠点として走り回ったのだが、ルツについて望んだ情報は得られなかった。


今、シンルはザーレと共に船上で海風を浴びている。

乗船し、十日余りが経っていた。


シンルとザーレが乗ったのは、数十名の船員が操る中型の木造船だ。

ロブサールから南部産の柑橘類を積み、王都へと向かう個人の商船だった。

そのため、隣やそのまた隣を優雅に並走する客船とは規模が大きく異なるのだが、甲板かんぱんの手すりにひじで乗り上げて見下ろした海面までの距離はなかなかに高い。

シンルたちを含め十人足らずの一般客が乗船しているが、客船で無いにも関わらず狭苦しいと感じることは無かった。

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