第24話 第三章 1-6


差し伸べられた手にどう応じるべきか迷っていると、ザーレは一瞬のうちにシンルの腰をさらって引き寄せてしまった。


「ちょっとザーレ! 嫌だ。近いよ離して」


ポヴェリアの子供の自立は早く、誰かの温もりを肌に感じた記憶はもうずっと昔だ。

逃れようとバタつくシンルを、ザーレは腕一本で軽く封じた。


「だーいじょうぶだって。とって食やしねえよ。寒い日は触れ合って眠るのが一番効率的なんだ。熱が逃げないからな。本当は裸で抱き合うのが正しいやり方だけどな、そこまでの寒さにはならないだろ多分」


「裸で?!」


しかも今、「多分」と言っただろうか。と、言うことは、今夜が予想より寒かったら本当に裸で抱き合う羽目になったのだろうか。


「無理! 絶対、無理!」


もう既に半分押し倒されるように無理やり眠る態勢に入らされたシンルは尚も抵抗を試みた。

けれどその間にも、すらりと指の長いザーレの、細いけれど大人の男らしい節くれだった指が上着のすそから侵入してきた。

シンルからは見えないが、人差し指の背で撫ぜるように脇腹をくすぐっているような感触がある。


「つっ」


妙な感覚がして、シンルは小さく背をのけ反らせた。

そんな自分の反応がますます恥ずかしくて、耐えられず顔を覆う。

子供の自分にも、わずかな情事の知識くらいはあるのである。今の動きがザーレにどう受け取られるか考えると、もう顔が見られなかった。

それに、次に何をされるのか考えると怖い。


「悪い。からかい過ぎたな。可愛かったもんだからつい、な」


おずおずとシンルが指の間から瞳をのぞかせると、ザーレはすまなそうに笑ってシンルの上から身体を退かした。

そして、かたわらに横たわる。


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