第14話 第二章 2-2



今居る場所があの林ならば問題は無い。時間はかかるが夜通し歩けばポヴェリアに戻れるだろう。ダグマルがルツを見つけているかも知れない。一度戻らなくては。


シンルがよろめきながらも立ち上がろうとすると、ザーレと名乗った男が動く。何をされるかと身構えると、手を差し出された。


「無理すんな掴まれよ。送ってく。何があったか知らねえが、あんたすぐそこの村の子だろ?」


信用しては駄目だと思った。


「違う。いらない」


「はあ?じゃあもしかしてリゴの方から来たのか? いや、その身体じゃ無理だってー。とりあえず座れ、な?」


「嫌だ!」


ルツが無事かどうかもわからない中、呑気に座ってなどいられるか。


「いいからほっといてよ!」


「そう言う訳に行くかよ。なあ、隣の村ならそう遠く無い。歩いて行って馬を調達しよう。それならリゴまで早い。どうだ?」


「……付いて来る気?」


「そんなふらふらなのに一人で馬に乗れねえだろ。それに金は?タダじゃ貸してもらえないぞ。オレを連れてった方が得だと思うけどな?」


「それは……そうだけど!そこまでしてくれる意味がわからない。それにどうして怒らないの?助けてくれた礼も言って無いのに変だよ!」


ザーレは目を丸くした。


「あんた良い子だなー。可愛い!」


「な、何が。何処が?訳わかんない」


「そんな疑うなよ。ただ放っとけねえだけなんだ。黒死病で弟を亡くしてな、もう大昔のことだけどよ。だから、ガキには優しくしたい。ただの自己満足だ気にすんな」


――黒死病


その言葉はシンルの心を凍らせる。今の言葉が本当ならば、なんと声をかけるべきだろう。わからずシンルはただ、黙ってしまった。その沈黙をザーレは違う意味に受け取ったらしい。


「信用できないって顔だな。じゃあ逆に聞くが何だと思うんだよ」


そう聞かれると困るシンルだ。


「も……物盗ものとりとか?」


「あんたみたいなボロっちいチビっ子から何を盗るんだよ」


「まぁ、確かに」


「ぶっ」

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