第25話 回鍋肉
「何作ってるの」
「回鍋肉」
遥はメニューを聞くと何も言わずにテーブルの方に戻っていった。
「新しく買った服。着てみたら」
「あー…後ででよくない?」
実のところ、遥がどんな服を買ったのか拓也は気になっていた。しかし、そんなことを言えるはずもなく。
野菜を大きめに切った後、冷蔵庫から豚肉を出す。
豚肉を予め作っておいたつけタレに漬ける。その後、野菜と肉をフライパンに入れ、タレと和える。回鍋肉は、拓也が中学生の時に家庭科の調理課題として家で作った初めての料理だった。
拓也がご飯をよそって振り返ると、そこには新しい服を着た遥がいた。
白のハイネックニットとペールピンクのワイドパンツ。そして、ベージュのベレー帽。いわゆる春の綺麗めファッションというものだった。
「飯…出すけど」
遥が眉を顰める。
「感想とかないわけ」
ファッションセンスのない拓也にとってファッションについての感想というのは空論の引き金にしかならない。おどおどする拓也を見て遥がさらに眉間に皺を寄せる。
「あんたに聞いたうちが間違ってたわ」
遥はそう言うと、せっかく着た服を脱ごうとした。それを拓也が手で制止する。
「いや…めっちゃ…可愛いと思う…」
裾に手をかけていた遥が拓也の方を見つめる。
「心がこもってねぇぞ」
「ごめんなさい…」
遥は軽くため息を吐くと、部屋着に着替え始めた。遥が着替えている間に夕飯の準備を済ましておく。
回鍋肉は少し冷めてしまっていた。
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