第21話 渋谷
渋谷の雑踏はいつになっても変わらない。やはりこの時間帯は、学校帰りの学生の姿が多く見られる。
プチプラのショッパーに流行りのアイドルのキーホルダー、インスタ映えするスイーツなど、キラキラしたものが交差していた。
「こんなんなってたんだ…上からだと人がごちゃごちゃ歩いてるのしか見えなかったから」
遥が足を止めて周りを眺める。若者向けのお店や、巨大な駅ビル。隣にはまだ建設中の駅ビルもある。何もかもが遥にとっては新鮮なものだった。
見たことがないわけではなかったが、こうして横から立体的に見るのは初めてだった。天界にはないものばかりで、様々な文化がその大通り沿いに並んでいた。その大通りは「道」というより「国境」と例えた方が正しいようにも思えた。
「人間って凄いな」
目を輝かせている遥の姿は、まるで田舎から来た少女のようだった。その姿に思わず吹き出してしまう。
「何で笑うんだよお前」
遥が拓也の耳を引っ張る。
「駅ビルの中から見るか」
拓也が耳を摩りながらエスカレーターに乗った。遥も後を追ってエスカレーターに乗る。
駅ビルの中には女子向けのアパレルのお店が多く入っていた。拓也としては居心地の悪い空間ではあるが、遥に付き添っておけば周りに変な目で見られることもないだろう。と思っていたが、何やら周りの反応がおかしい。こちらを指差して何かを囁く人が多く見られる。
最初は気の所為だと思っていたが、明らかにこちらを指差す人が多い。間違いなくこちらのことを話しているのだろう。
周りを気にする拓也を他所に、遥は色々な服を手に取って自分に合わせてみる。時々拓也の方を向いて「この色似合う?」「これサイズいけるかな」など聞いてくる。女子のことはよく分からないため、拓也には適当に答えることしかできない。
彼女がいたらこんな感じなのだろうか。
そんなことを時々思いながら、拓也は遥に付き添っていた。
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