第14話 動揺
「え、な、なんでそう思うの」
明らかに声が裏返っているのに気付いてさらに焦る。
「なんでって…拓也くんのシャンプーっていうかボディーソープっていうか洗剤っていうか…同じような匂いしたから。それに、結構初日から喋ってたから」
この女は警察犬か何かなのだろうか。ここまで鼻が効くなら、ある程度の需要が社会にあるように思える。
「うちのクラスで拓也くんと同じ匂いがする人はいない。それに、遥ちゃんは昨日まで匂いしなかったのに、今日は拓也くんと同じ匂いがしたから」
これは犬。いや、このカバー率も兼ね備えるのであればアフリカゾウというべきか。いつの間に自分の匂いを嗅いでいたのか。金澤の嗅覚は変態的な超能力と言っても過言ではない。
「そんな訳…なんで私があいつと同居するのよ」
「同居なんて一言も言ってないけど……」
喉が詰まった。もう学校でのキャラを捨ててしまっていた。完全に堕天使の状態である。
手を顔の前で振るが、もうボロが出すぎてどうしたらいいのか分からない。
「いや、なんだろ。たまたまじゃないかな……」
ここまで焦っているのはいつぶりだろうか。先までの高を括っていた自分が恨めしい。
「なんかちょっと遥ちゃんの素が知れた気がするな。意地悪言ってごめんね」
素と言われると、もっと大きなものが遥の中には眠っている訳だが、そこはとりあえず、はにかんで済ましておいた。とにかくこの場から早く離れたい。
しかし、金澤の精密射撃は止まらなかった。
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