第4話 体育

その日の女子の体育はやり投げの授業だった。担当は浅川だ。

「じゃあ、とりあえず2人で1つのやりを持て。北野は金澤かなざわとやれ」

金澤 穂花ほのか。このクラスの学級委員。明るく、クラスのムードメーカー的な存在。うるささでは、光流と肩を並べる。

「じゃあ、ロープが巻かれているところに親指の付け根をかけて。まずは適当に投げてみろ」

浅川が笛を吹くと、一斉にやりを投げ始める。そんな中、1つだけ他の女子の2倍以上飛んでいる矢があった。遥が投げた矢だ。

「北野。お前、陸上部とかなんかだったのか」

「いや、そういうんじゃないんですけど…」

「お前陸上部とかどうだ。センスがあるように見える」

遥は苦笑いで聞き流し、やりを穂花に渡した。


一方、男子の授業は跳び箱。

拓也も光流も運動は得意な方で、いつもお互いに張り合っている。

「何段から行くんすか。拓也せ・ん・ぱ・い」

「久しぶりだから7段から」

そう言うと、拓也は走って踏切台を踏み、軽々と7段を超えた。

「私はぁ?そんなウォーミングアップとかいらないんで?9段から行かせて頂きます」

光流はそう言うと、長い助走を取って走り出し、踏切台を踏んで軽々と飛び越え……るはずだった。

拓也の背後で大きな音がする。何かが落ちたような。その次に、光流が唸る声が聞こえた。

「何してんだよ…」

拓也が走って光流の方に向かうと、そこには首の後ろを押さえて倒れこんでいる光流の姿があった。これをグラウンドの花が見たらどう思うだろう。

拓也は黙って光流を背負うと、そのまま保健室へ向かった。


光流のこういうところは前から変わらない。しかし、こういうところが友人として放っておけない。

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