山の彼方の空遠く 幸い住むと人のいう



 これはドイツのある詩人の言葉です。人は昔から幸せを求めて探し続けてきました。そしてどこか遠くの空の下にあるに違いないと思い込んで探しにいき、疲れ果てて戻ると、意外にも足下に幸せがころがっていたことに気がついたりするものなんですね。

 幸せというやつは蝶と同じで「追えば追うほど逃げるもの」。

むしろ黙って静かにしていると、いつのまにか近寄ってきているもの、みたいなことってありますよね。

 話はいきなり変わりますが、段ボール箱という奴、とても便利なものですが、溜ると片付けにちょいと手間がかかります。

「コンチキショウ!」 カッターで切り、足で踏んづけ、ガムテープでくくり、集積所まで運ぶ。「ふんとにもうっ、めん どくさいったらありゃしない!」

 しかしそんなとき、ふと思ったりします。

腰を痛めて介護施設で寝たきり生活している私のお義母ちゃんなら、きっと次のように言うだろうなと。

「段ボールを畳んで運べるなんて、なんて幸せな身分だろう」

失ってみて初めてわかるのが、「健康」と「親のありがたさ」といいます。

 日常生活を普通に暮らせるのってかなりの幸せなことなんですね。

 知人が、自動車事故にあって不自由な体になり、初めて普通の生活のありがたさが身に染みてわかったと言っていました。

幸せはどこか遠くにあるものではなく、けっこう身近にあり、私たちは、ただそれに気づかないでいるだけなのかも。

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