薄暗がりが消えていく

ある夜、月がとってもきれいだったので、思わず月が出てくる歌を口ずさんでしまった。
「春高楼の~花の宴 ♪」「月の砂漠をはーるばーるとー♪」

ああ、昔の歌は風格があったなぁ。
だけど、こういう名曲を、最近の小学校では習わないんですよね。もったいないなぁ・・・と考えていたら、ふと思い出したことがある。

ある時、姪っ子たちがこんなことを私に言ったのだ。
「ねぇ、昔の歌って、どうしてみんな暗いの?」

ショックだった。

そうか私が、風格があると感じていた昔の歌の数々は、今の子どもらにとっては、単に「暗い」としか感じないものなのか。

たしかに「旅愁」でも「津軽海峡冬景色」でも、名曲だと思うけど、言われてみれば明るくはないなぁ。

 そういえば、歌だけじゃない。現代はどんどん明るくなってきてるじゃないか。

昔の便所は、裸電球で薄暗かったけど、今のト イレは蛍光灯で明るい。コンビニやパチンコ店なんか一日中まぶしいほど明るい。

だから、座敷わらしやまっくろくろすけや妖怪なんかは「薄暗がりのないところはイヤ」と、出現しなくなっちゃったんだな。

時代も歌も人も、どんどん薄暗がりがなくなってきて、そのかわり、陰影や深みもなくなってきて、うすっぺらになってきているんじゃあるまいか。

 これって、おじさんの負け惜しみだろうか?

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