第6話

「お前さ、今日もチャリ?」

 想定外のことを聞かれて、私は一瞬戸惑った。

「う、うん。そうだけど。」

「そ。じゃ、9時半な。」

「はい?9時半に帰れってこと?」

「それ以外に何があるっていうの?途中まで一緒帰るから。」

「はい。分かりました。」

 

 9時半になって、私が帰る準備をしていると、笹原くんは先に階段を降りて行ってしまった。置いていかれるのではないかと心配した私は急いだが、途中先生に捕まり最近の成績を聞かれ話し込んでしまった。とてつもない、罪悪感を感じながら駐輪場に向かうと、

「遅すぎだろ。何やってんの?」

 と、自転車にまたがった笹原くんが言ってきた。私は急いで自転車を出そうとした。すると、ハンドルが当たって3台ほどドミノ倒しをしてしまった。慌てて直しにいこうとすると、

「いいよ。俺がやるから。だって、お前がやる方が時間かかる。早く帰りたいの。」

 と言って、すぐに並べてくれた。

 私たちは、学校の他人の恋沙汰やら、先生の愚痴やらを話しながら15分ほどの2人の時間を楽しんだ。

 その夜、私は笹原くんへの感情に気づいてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る