第五幕:補充要員(五)
「タクティクス? それは古代語か?」
ウィローは聞いたことがない言葉だった。しかし、「
「はい。古代語です。意味は『戦術を指導する者』。ただし、指導と言うより、助言だと思ってください」
「助言? まさか、オレのような
「それこそ、
思わず苛立ちを含ませたウィローの質問を守和斗が笑って受け流す。
「
「……つまり、スワトさんはパーティーとして戦う時にどう動くかを助言するということですか?」
トゥの控えめの質問に、守和斗は深々とうなずく。
「はい」
「そんなの必要ねぇだろう。前衛が突っこんで、後衛がぶっ放して、回復役が回復して――」
カールの言葉に、今度はウィローはうなずいた。どこのパーティーもだいたいそんなものだ。
「そうなんですよ。一流パーティーでも、意外にそういうところが多いのです。お世話になった5パーティーでも、
「なんとかなるなら、必要ねーじゃん!」
「たぶん、多くの方がそう考えているのです。確かに通常の戦闘ならそれでもいいのかもしれません。しかし、
「え……
各層には、その層の罠や魔物をコントロールする
それを壁からとりだしてしまえば、その層の罠をとめたり、魔物の復活をとめることができる。さらに層を保護する魔力障壁を止めることもできるので、魔力や酸素の供給も自由にできるようになる。
すなわち、
つまり、
もちろん、そんな
そんな
「私は最初、情報サービスを主体に活動していました。事前情報収集サービス、
「バトルログ? それ、なに?」
珍しくタウが自分から質問する。
「はい。戦った敵の種類、配置、特徴、倒すまでのおおよその時間、誰がどのように倒したか……そういうことを事細かく記録していくのです」
「なぜ?」
これほど食いつきのいいタウを見るのは、ウィローも初めてだった。先輩冒険者であるテラの名前がでてきたあたりだろうか。強くなることに貪欲な彼女の琴線に触れるものがあったのかもしれない。驚くほど熱心に聞きいっている。
いや、それはタウだけではなかった。
「たとえば魔物が潜んでいる場所が最初から正確にわかれば、そこに向かって強力な
「い、一撃……ボクの
最初はあまり興味なさそうだったキィが、興奮ぎみに笑いをこぼす。
「それによりダメージが抑えられますから、安全度もあがって回復が楽になり、消費魔力を減らすことができます」
「な、なるほど……それは助かります!」
トゥが嬉しそうに手を叩きながら笑みを見せる。
「魔力が節約できれば、探索範囲も拡がりますからお宝を手にいれる可能性もあがるわけです。ご存じの通り、お宝をいくら手にいれても、私は分け前に含まれませんから、みなさんの収入が上がることになります」
「マジか……最高かよ!」
カールまでニヤニヤ顔が止まらない。どこにも反対の色が見えやしないどころか、大賛成の色をなしている。
これは説得と言うより籠絡だ。
ウィローは横目で
「何度か
「それが、
ウィローの確認に「はい」と守和斗が明るくうなずく。
「今回のウィローさんとの基本契約は『
「…………」
いつの間にか、その場をしきっているのは若い
そして、そこからの話は早かった。彼の独擅場となったその場に、加入を反対する者はいなくなっていたのである。
「……では、滞りなく契約成立ということで」
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