第一章:救世主は、補充要員?
第一幕:補充要員(一)
「お前たちとは、もうやっとれん!」
「そうだ。君たちは下手すぎる。ついていけないよ」
その相手は、【ウィロー・コクート】と、仲間の4人。彼らは、薄汚れて傷んだ鎧や衣類を身にまとい、その疲弊した表情を浮かべていた。酷いのは見た目だけではない。服の下には、多くの痣やすり傷もできてしまっている。
それは
「ま、待ってくれよ、な? 明後日にはまた潜るチャンスがあるんだ。今、やめられたら6人を切ってしまう……」
ウィローは、パーティーリーダーとして2人を必死に説得していた。短く切りそろえた金髪を掻き乱しながら、ひきつった笑いを浮かべて懐柔を図る。なにしろ、穴の下に広がる魔神級の
「あのなぁ、いくらチャンスがあっても死んだら元も子もねーんだ」
しかし、2人が首を縦に振ることはなかった。
「だいたいテメーが悪いんだ。よく考えるんだな……」
「そんな……」
その後、何を言っても取りつく島もなかった。結局、2人はその場から去ってしまった。
幻聴だろうか。ウィローの耳には、周囲からの嘲笑が聞こえてくる気がしていた。
(くそっ……なんでだ……)
確かに、戦果は散々であった。苦労するはずのない魔物に翻弄され、さらに第8階層の核たる【
これで第8層の魔物や罠が復活することはなくなる。あとは掃討さえしてしまえば終わり。最下層から魔神が上がってでも来ない限り、第8層は安全なエリアとなるだろう。
つまり、次に潜るときは第9層。今よりも手ごわい魔物がいる可能性がある場所に行かなくてはならない。今のレベルでも、まともに戦えていないというのに。
(だけど……だけどオレは、しっかり戦っているぞ!)
ウィローは、腰に下げていた片手剣の柄を握りしめる。巻いてある皮がつぶれるのではないかというぐらいに。
確かに、自分の剣術が飛びぬけて長けているとは言わない。しかし、
(俺が
もちろん、そんなことを考えても口にはださない。そんなことを言えば、確実にパーティーは空中分解する。
「どーすんだよ、リーダー」
仲間から不安の声が上がる。
「メンバー、足らなくなっちまったじゃねーか」
そんなことは言われなくてもわかっている。そうだ。今はともかく、抽選で得た明後日のチャンスを生かすために、新しいメンバーの確保が大事だ。明日の夜までにメンバーの変更申請を
「安心しろ。今から、オレは
そう胸を張って答え、ウィローは
仲間の不安そうな声など聞こえないフリをして……。
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