第五幕:冒険者(五)
パイが守和斗に薦めてきた
どうやらわりと新しい
「新しい……と言っても、十数年前に
パイは、すました顔で説明を続ける。
「そもそも冒険者の走りである、昔の探索者や探求者と呼ばれていた人たちは、なんらかの研究者たちであり、目的も調査がメインでした。ですからその活動も、今の冒険者ほど毎日のように出かけたりしていなかったのです。ところが、研究者につきそっていた腕利きの者たちが、調査の護衛より、珍しい物品の収集や、その近くにわきやすい魔物退治のような仕事をより多く請け負い始めます。そこから彼らは、冒険者と呼ばれるようになったと言います」
守和斗は、なるほどと歴史にうなずく。
確かにいきなり「冒険者」という職業が生まれたとは考えにくいが、その流れなら納得がいく。
「冒険者と呼ばれる者たちの生活は、通常の生活よりも冒険が中心の生活に変わっていました。研究者とは異なり、とにかく冒険しないと金が入らないのですから当然でしょう。それに冒険以外にも、死なないようにするために修行したり、冒険でした重い怪我による休養など、とにかく時間がとられてしまうことが多くなってきたわけです」
確かに冒険という疲れる仕事から帰って、家の片付けをするというのは億劫であろう。
それに冒険者の中には、ずっと旅をしながら続ける者も多い。外での食事の支度ひとつとっても大変なことは経験済みである。
「それでもずっと冒険者たちは、なんとかやっていました。しかし
ちなみにこの【
逆に他の
「
「……それ、下手な
「別にすべてをやるとは限りません。契約時になにをやるか決めてやるのが普通です。ちなみにほとんどの方は冒険にはいかず、リスクの少ない日常生活支援をやっている場合が多いので、あまり目立つことはありません」
パイの説明に、ファイが「ああ、そうか」と深くうなずく。
「私は『冒険者たちも召使いを雇うことがあるのか』と思っていたが、もしかして召使いではなく、あの者たちは
「そうです、ファイ様。さすが賢い。……召使いのように長期に契約するわけではなく、賃金を安くするために期間限定で
「しかし、それにしてもやることが多岐にわたりすぎるだろう。資格はどうやってとるのだ?」
「ありません」
「……え?」
「特に資格はないのです。冒険者の資格、つまり
「ふむ……」
「しかし、
「ふむ。すごい仕組みだな。……しかし、逆に言えば、
「先ほどの支払いの件もありますし、
「ほほう。よくできているな」
感心するファイに、守和斗も同意する。
その方式であれば、確かに守和斗でも冒険者になることはできるだろう。
ファイやクシィが冒険者登録した後、守和斗を
「そうか。これで俺も、憧れの冒険者になれるのか!」
「ええ、なれますよ。良かったですね」
「ああ。ありがとう、パイさん!」
パイの言い方はどこか平坦だったが、守和斗は心から礼を言った。
まさかその時、パイがメガネの下で「してやったり」と思っているとは、守和斗も気がつかなかったのである。
守和斗が喜びすぎて目が眩んでいたというのもあるが、そもそもパイは悪意を隠すことに長けていたのだ。
「よし! 明日はみんなで
守和斗は希望を胸に、意気揚々と宣言した。
翌日。
その宣言通り、全員無事に冒険者になることができた。
守和斗も
しかし、その全ての手続きが終わった後に、彼は知ることになった。
彼が憧れていた、冒険者としてレベル上げというゲーム的な要素は皆無。
いくらがんばっても、冒険者としての地位を上げることできない。
――それが1ヶ月前の出来事だった。
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