第6話 魔法について色々知りました

 さて、魔法の練習をすると言ったが何をすれば良いのか分からない。

 攻撃魔法の練習?それだとリリーの家の壁に穴を開ける事になる。

 んー……


「なあ友崎。」

「なんだ?」

「お前魔法の威力弱くしてたよな。あれどうやった?」

「あれか?あれは単純に弱くなるように調整しただけだよ。」

「それって本来可能なのか?」

「どういう事?」

「ゲームだと決められたMPを消費して無駄に長い詠唱モーションを眺めて使う訳じゃん。そうなるとこっちの世界でも同じ事がおきると思うのだが。詠唱はスキルで無いにしても威力は抑えられないんじゃいか?」


 確かに、何故威力を下げれたのだろう。


「もしかして……」


 ある仮説が浮かんだ。

 その仮説が正しいか確認する為に簡単な魔法を使ってみる。


「フラッシュ。」


 瞬間、失明するかと思う程眩しい光が視界を覆った。


「ちょっ、おま、いきなり何すんだ!」

「悪い。」


 軽く謝罪しながらすぐさまステイタスを確認。


(ゲームで設定されている消費量分MPが減っている。なら次は……)


「フラッシュ。」


 今度は部屋の中を軽く照らすくらいまでになる様威力を下げる。


(MPの消費量は……やっぱり。)


 確認したMPは先程使った魔法よりも消費量はかなり少なくなっていた。


「お前、さっきから何して」

「和也、この世界の魔法の概念はゲームと全然違うかも。」

「どう言うことだ?」

「簡単に説明するとだな、まず普通に魔法を使うとゲームで設定されている消費量分MPが減るのは分かるだろ。」

「おう。それはさっき俺が言ったからな。」

「だが、今威力を下げて魔法を使ったがその消費MPは普通に使うよりも少なくなっていた。」

「本当かそれ。」

「本当だ。」


 これで一つの仮説は証明できた。

 この世界、今はゲームワールドとしておく、ゲームワールドでは任意の魔力消費量で魔法が発動する。それはゲームで設定されている消費量分より少なければ、たとえ消費量1だとしても魔法が使える。攻撃魔法のアイススピア、ファイヤボールなども同じだろう。

 となるとだ、初級魔法のファイヤの設定消費量分よりも魔力を乗せるとどうなるのか。多分だがその魔法は中級魔法に格上げされると思う。

 例えば、炎系の攻撃魔法ファイヤの設定消費量は10だ。そしてその上、中級魔法のファイガの設定消費量は30となっている。そこで、俺が試しに魔力11を使ってファイヤを使うと、それはファイガに自動的に変更され使用する事となる。

 なかなかややこしいぞ。


「魔力の調整が出来るって事はだ、その魔力を使って色々と出来るのでは?」

「どう言うことだ?」

「ゲームの魔法って言ったら設定されている魔力量を消費して、設定されている形状の魔法を発動させるわけだろ。それなら俺らが知っている魔法の形状自体変えれるのではと思ってな。」

「ごめん、何言っているか分かんねよ。」

「論より証拠、実際に試してみるか。」


 そう言いながら近くのテーブルの上に手をかざし省略詠唱で魔法を使う。


「アイス。」


 魔力量は勿論最小値で使用。

 本来、ゲームでのアイスの魔法のグラフィックは地面や物を凍らすものだが、今回はある形状の物を想像しながら使用した。


「お、おい。それって。」

「見ての通りチェスのコマだよ。」


 手をかざしているテーブルは凍らず、テーブルの上には透き通ったチェスのコマ、ポーンが生成されていた。


「これがさっきお前が言っていた形状自体を変えるって事か?」

「そうだ。俺達はゲームのモーションや出る魔法の形状を見てこの魔法はこういった形だと思い込んでいた。だから、その常識に近い考えを捨てこの魔法はこんな事も出来ると考える。すると、今、俺がやった様な同じ魔法だが違う事が出来る。」

「んー、説明が下手でわかんねーけどなんとなく理解した。」


 説明がへ下手って……

 まぁ、これは説明するより実際にやった方が分かりやすいと思う。


「因みに、これ、継続的に魔力を流し込まないと維持出来ないみたい。」


 さっきから無意識で形状維持をしていたが油断したら壊れて無くなりそうになる。


「魔法の練習になって丁度良かったじゃねーか。」

「和也もやってみろよ。」

「オッケー。えーと、じゃあお前と同じポーンを作る様に想像して……アイス。」


 和也もテーブルに手をかざし詠唱をする。

 すると、テーブルには二つ目のポーンが生成された。


「お、おぉ。出来た。って、あぁ……」


 感激のあまり気が緩んだのか和也のポーンが砕けて消えた。


「なるほどな。これは結構難しいかも。」

「慣れるしかないよ。」


 和也にそう言いながら三つ目のポーンを生成する。


「なぁ、和也。お前にチェスで俺が勝ったの何回だっけ?」

「今のところ、俺が53勝、お前が48勝で俺の勝ち越しだな。」

「ならチェスキット一通り作って勝負しねぇ?」

「良いぜ。また俺が勝つけどな。」

「言ってろ。」


 そんな話をしながら1回魔力供給を切りコマを壊した。

 流石に同じ色のコマだと分かんなくなると思い、自分のコマに色を混ぜて生成する為だ。

 色を付ける魔法って有ったかな?

 まぁ、どうにかなるでしょ。

 こうして俺達はリリーが呼びに来るまでチェス盤とコマを作りチェス対決をしていたのだった。

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廃人がゲーム世界の勇者になっちゃいました ユウやん @yuuyann

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