第4話 初めての村、エルーに着きました

「先程は助けて頂き、本当にありがとうございました。それに、村まで護衛をしてもらえるなんて。」


 少女を助けたあと、彼女を村まで護衛する事にし今は森の中を歩いている。


「いえ、当然の事をしているだけです。」

「友崎の言う通りだ、困っている人を助けるのは当然だよ。」

「うぅ、なんとお礼をすれば……」


 さて、涙目になりながらもお礼を言っている彼女の紹介をしようと思う。

 彼女の名前はリリー=エルシャ、腰まである長い黒髪をした普通の村娘だ。

 将来の夢は一流の薬剤師になり村の為に頑張りたいと、確か公式設定はこんな感じだったかな?

 仲間にした時のポジションはヒーラー、いわば回復系統担当がメインで、覚えるスキルは補助系統と援護系統を習得する。

 攻撃魔法も覚えるが初級魔法までと、攻撃には向いていないので後方で遠距離回復魔法をしてもらうのがゲーム内の彼女の役割だ。

 因みにリリーの人気は全キャラ中5位、女性キャラでは3位とかなりの人気だったりする。

 和也もリリーを俺の嫁と言うほど気に入っており、こうして出会う事が出来て内心では狂喜乱舞していると思うと笑えてくる。


「リリーはこの近くで薬草の収集してたの?」

「はい、お家に有った薬草が切れそうだったので。」

「そっか、でもこんな所に1人で来るのはやめた方がいいと思うよ。」

「ここら辺は魔族が出るような奥深くでは無いので安全に薬草を収集出来るのですが……そう考えると少しおかしいです。」


 前を歩くリリーと和也が楽しそうに話している後ろを俺はスキル『探知』と『聞き耳』を半径1キロまで広げ辺りに注意を向け付いて歩いていたが、2人の会話を聞いていてリリーの言葉に違和感を覚えた。

 確かにこの森にはゴブリンは出現はするがそれは森の奥地、モンスターLvが5以上が出るような所。

 猪型のモンスターが出るような浅い所で出るのは確かに引っかかる。

 ……あれ?

 このパターンはゲームだと確か何かのイベントと予兆だったような……


「所でお2人は冒険者ですか?」

「おう、昔っからの腐れ縁でな。今もこうして2人で旅をしているわけだ。」


 思考を巡らせている間にどうやら前の2人はすっかり仲良くなっているらしく今はたわいのない話で盛り上がっている様子。


「そうですか。お2人は腐れ縁、夜な夜な旅で疲れたお互いの体を癒す為にあれやこれやと……ぐふふ、これはこれで、美味しいです……」


 おや?

 これはもしや?


「ん?何か言った?」

「いえ、何も言ってません。」

「?」


 和也には聞こえない程小声で呟いたようだが聞き耳を発動させている俺にはバッチリ聞こえていた。

 ……和也、お前がいつも嫁と言っている彼女はどうやら腐っているようだぞ。




「そろそろ森を抜けます。」


 あれから1人で色々と思考を巡らせている内にどうやら森の端まで来ていたらしい。

 そして、森を抜け視界が開けた先に小さな村が見えた。


「あれが私の住んでいる村、エルーです。」


 指をさしながらリリーは自分が住んでいる村を嬉しそうに紹介した。

 和也も俺も心の中で知ってると思いながらも黙って付いていく。


「カズヤさん、トモザキさん、ようこそエルーへ。」


 村の入口に着いてリリーは俺達を歓迎する様にこちらを振り向きながらそう言ってきた。

 自己紹介は森で助けた後にしたので名前はお互い把握済みだったりする。


「リリー!!」


 リリーの後ろから若い女性が走りながら近づいてくるのが見えた。


「お母さん!!」

「あぁ、リリー。良かった、無事だったのね。」


 リリーにお母さんと呼ばれた女性は涙目になりながらリリー抱きつく。


「お母さんどうしたのいきなり?」

「先程森の近くを通った商人がリリーに似た声の悲鳴を聞いたと。どれだけ心配したか……」

「心配かけてごめんなさい。お父さんは?」

「リリー!」


 うお!?

 いきなり後ろから大きな声が聞こえていたびっくりした。


「お父さん!」

「リリー、無事だったか。」


 どうやら俺達に目もくれずにリリーに駆け寄った男性はリリーの父親のようだ。


「ダンデさん、娘さんが無事で良かったですね。」

「あぁ。森でゴブリンの死体を見た時は絶望しかけたが、足跡を見つけてもしやと思って戻って来て正解だったようだ。」


 後ろを振り返ると数人の男性陣が安心した目で抱き合う家族の姿を見ていた。


「ところでリリー、そちらのお2人は?」


 お、母親がこっちに気付いたようだぞ。


「彼らは私を助けてくれた人達で、カズヤさんとトモザキさんって言うの。」

「まぁ!それは本当なの?」

「うん、それに危ないからって村まで護衛してくれたんだよ。」

「おぉ!娘を助けてくれただけではなく護衛までしてくれたとは!君達にはなんとお礼をしたらいいか。」


 そう言いながらダンデと呼ばれてた男性は俺達に向かって頭を下げる。


「あ、頭を上げてください!」

「そうです、俺達は当然の事をしただけです。」

「おぉ、なんと謙虚な!おいマリーよ、今日は彼らを家に招待してパーっとやるぞ!」

「えぇ、あなた達も宜しいでしょ?」

「俺達は大丈夫ですがよろしいのですが?」

「友崎も言ってますがよろしいのですか?娘さんを助けたと言っても、どこの誰とも分からない冒険者を家に上げるのは……」

「心配いりませんわ。娘の恩人を無下にする方がかえって申し訳ないわ。」

「そう言う事でしたらお邪魔します。」


 と、トントン拍子で話が進み俺達はリリーの家で小さなパーティーに参加することになった。

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