第3話 初めての戦闘とイベント
「オイオイ、マジかよ。」
「モンスター、それも猪型。」
「どうするよ、逃げる?」
「いや、戦おう。」
「マジ!?」
「大マジ。」
「勝算は?」
「ある。」
猪のモンスターとの距離は約十五メートル程度か。
和也が剣をまともに使えるとは思ってはいないがこちらには魔法がある。
それに、見たところ敵は1体。それならまだ勝てると考え勝負をする事にした。
まぁ、猪のモンスター相手に背中を向けて逃げ切る事自体が無理って話で、まず脚力で確実に負け追いつかれる。追いつかれるたら最後、鋭い牙で体を貫かれゲームオーバーになりかねない。
「俺は後方で猪の足を止める。その間に和也は剣で切るなり、魔法で攻撃するなりしてくれ。」
「了解!いつものフォーメーションだな。」
俺達は普段ゲームで後方支援は俺で前線で戦うのは和也と決めている。
別に俺が前線に出て戦っても良いけどそれをすると和也が
「お前ばっかモンスターを倒すから経験値が入らねーんだよ、下がっていろ。」
と、怒るので今の形に落ち着いている。
「戦闘準備!敵モンスターの行動をよく見て迎撃!」
「了解!っと、モンスターの突進が来るぞ!」
「モンスターの前方約5メートルに氷系魔法まであと5、4、3、2、1、『フリーズ』!」
先程使ったファイヤーよりも威力をかなり落とすように意識をし、猪が目標地点に到達した瞬間初級氷魔法のフリーズを唱える。
すると地面が凍り、猪は足を取られ転んだ。
「和也!」
「分かってる!」
その掛け声と共に和也が長年愛用していた武器、魔剣『グラム』を抜き和也は猪に斬りかかった。
誰の目から見ても初心者の斬りかかりだったが、まるでバターを切るかの様に刃が猪の体を通る。
「ぶもおおぉぉぉお!」
豚が鳴いたような奇妙な声をあげ猪は頭から真っ二つに斬られた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「や……」
「「やったーーー!!」」
初めてのリアルでの戦闘だったが敵を倒せた喜びでその場でガッツポーズ。
「あっさりと倒せたな!」
「和也ナイス!イエーイ!」
「イエーイ!」
戻って来た和也とハイタッチを交わし先程倒したモンスターを見る。
「なぁ、このモンスター。」
「そうだね、間違いなく始まりの森にしか生息しないモンスターだね。」
「やっぱりか。」
始まりの森はゲームを始めて最初にスポーン場所の一つの名所だ。
ゲームでは確かこの森以外に『エルデの谷』、『フレムの湖』と合わせて三つ初期スポーン地点が有る。
そして必ずと起きる事が一つ。
「きゃああああぁぁぁぁぁ……」
「悲鳴!」
「向こうからだ!」
「急ごう!」
そう、必ず起きる事。それはゲームを始めて初のイベントだ。
「嫌!来ないで!」
俺達が駆けつけ目にしたのは大木の根を背に追い詰められた少女と、いやらしく口を歪めたゴブリンの姿だった。
「お願い来ないで!」
「ゲへへへ……」
必死に手に持っている木の棒を振り回し抵抗している少女をまるで弄ぶかの様にゴブリンはゆっくりと近付いていく。
「和也。」
「おう。」
「もし奇襲に失敗しても安心しろ、援護するから。」
「心配いらねぇよ。」
「本当か?この前もそう言ってPvPの時奇襲失敗したじゃん。」
「おい、あの時の話は止めろ。まぁ、見てろって。」
そう言うと和也は何かを呟く。すると和也の気配が消えた。
「どうだ。」
「おまえ、それって。」
「おう、スキル『隠密』だ。」
スキル『隠密』は説明するまでもなく気配を消し背後を取ったり奇襲に役立つスキルだ。
ゲームだと確かスキルレベルが高いと相手からは全く見えなくなり探知にも引っかからなくなるスキルだったような……
「これで背後から仕掛ける。」
「あいよ。でも万が一の為に。」
手を銃の形にし指先に先の尖った氷の塊を精製する。
大きさは指程だが威力は多分大丈夫だろう。
「じゃ、行ってくる。」
出かけに行く軽いノリで和也は木の影から出た。
ゴブリンの方を見ると少女が持っていた棒を奪い取り舌なめずりをしながら二ターと笑う。その光景に少女は抵抗出来る物を無くし目に絶望の色を宿しガタガタと震えていた。
「オトナシクシテイロ。オマエハ、オレノヨクボウノハケグチニナルノダカラナ。タノシマセロヨ。」
そう言いながらゴブリンは腰に巻いていた布を取り少女へと近付く。
……アレだね、ゴブリンってモンスターを考えた人って最初どんな事を考えていたのかな?こんな変態、てかモロ18禁的存在で書いた理由では無いよね?
……多分。
てか、喋れたんだ。
そんな事を考えていると和也はもうゴブリンの背後にいた。
そこからゆっくりと剣を抜き一気に振り下ろす。
「ぐきゃあああぁぁぁあ!?」
何が起きたのか分からずにコレまた真っ二つにゴブリンは綺麗に斬られて絶命した。
「え?……え?」
少女は何が起きたのと辺りを見渡してキョロキョロとしている。
……俺の出るまでも無かった。
「大丈夫かい?」
「ヒィ!」
和也がスキルを解除し少女に声をかけるが小さく悲鳴をあげまた涙目になっていく。
「ちょ、泣かないで。俺達は君を助けたんだよ。」
「本当ですか?」
「本当、本当。」
おぉ、徐々に泣き止んでいく。流石爽やかイケメンと言われる程だ。
ん?俺かい?
中の中だよ……
さて、そろそろ和也の所に行くか。
「和也、お疲れ。」
「おう、見たか俺の実力を。」
「はいはい、凄いですね。」
「おい、こら!今、適当に流しただろ!」
「ごめんね、僕達は君を怖がらせに来たわけでは無いんだ。だから安心してね。」
と、少女に向かって言ってみたが、全身を怪しい魔法使いとかが使っている様なローブで包んでいる俺が言っても信憑性が無いのだろ、また怖がらせてしまった。
「お前は……大丈夫。彼も俺の仲間でいい奴だから。」
「本当?」
少女は俺に向かった首を傾げ聞いてきた。
「本当だよ。」
「そっかぁ……助けてくれたんだね。ありがとうございます。」
少女はまるで天使の様な笑顔でお礼を和也の方を向きながら言った。
……泣くぞ、俺。
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