第2話 ステータスが分かりました

 興奮が冷めない俺達はその場で大はしゃぎをした。


「まじですげー!」

「和也、俺達3次元から2次元の世界に来れたんだな!」

「夢じゃねーよな!」

「殴ってやるからそこに立て。」

「おいおい、冗談だ…グへッ!」

「どうだ?」

「…痛い……」

「なら現実だな!」


 とはしゃいで居たが頭が冷めていく内に本当にここがゲームの中の世界なのか疑問に思い始めた。

 もしかしたら拉致られてコスプレさせられているだけでは?

 ゲームの集団催眠プログラムでリアルに近い夢を見させられているのでは?

 そんな事を考えてしまい、不安に成って和也にも意見を聞こうとした瞬間。


「ファイヤ!」

「アッチ!」


 いきなり目の前に火の手が上がり驚いてこけた。


「いきなり何すんだよ!」

「ワリー、ゲームの中なら魔法も使えるかもって思って何となく呪文を唱えたら出た。」

「まじか……」


 それを聞き先程まで懸念していた考えはどこかえと消えていた。無理もない、たかだか18年態度しか生きてない人間が、それも異世界に来た事に興奮していた若者が目の前で夢にまでみた魔法を目の当たりにしてそんな大事な事忘れない方が無理だ。


「なら俺も出来るかな?」

「やってみれば。」

「よーし、ファイヤー!」


 手を前にかざし呪文を唱える。

 うん、正直に言おう、自分の考えが甘かった。

 和也みたいに火の手が上がる程度だと思っていた。

 しかし現実は違った、目の前の直径約1メートルは一瞬にして焼け野原になった。


「お、おぅ……」

「まじか……」


 二人して言葉を失う。


「は、はは、やっぱり廃人は規格外だね……」

「そうだな……」


 俺は今後、魔法に関してはあまり使わない様にと自粛する事に決まった。




「こうなってくると自分のステータスとか気になるな。」

「そうだね、どうやったら確認出来るかな?」


 魔法の使用後自分たちのステータスが気になりあれやこれやと試してみた。

 ゲームだとウインドウが出て今の自分のステータスや状態が確認出来るのだから今の俺達もそれが出来るのではと言う疑問から出た事だ。

 好きで読んでいたラノベだと意図もせずいきなり目の前に現れて主人公が驚くって場面がメジャーだけど其処の所はどうなっているんだろう?


「ダーメだ、わっかんね。」

「んー……」


 数分に渡り試行錯誤していだが和也が音を上げる。


「流石にそこまで都合よくいかねーか。」

「ラノベとかアニメだどすぐにステータスが書いてある『ウインドウ』が出るのにね。」


 そう呟いた途端目の前にゲームで見慣れたステータス表示が書いてあるウインドウが出てきた。


「うぉ!」

「ん?どうした?」

「出た…」

「何がだ?」

「ステータスが……」

「まじか!どうやった!」

「解んないけど今目の前表示されてる。」

「お前だけズリー。」


 そう言われてもこれっと言った行動はしてないし……


「もしかして。」

「何か解ったのか。」

「ちょっと待って、『ウインドウ』」


 そう言うと目の前に出てたウインドウは消えた。


「解ったーー!」

「なんだよ!教えろよ!」

「さっき呪文を唱えたみたいに口に出してウインドウって唱えるんだよ。」


 あ、また出た。


「おぉ!なるほどな。『ウインドウ』!」

「どう?」

「スゲー!マジで出たー!」

「しかし毎回ウインドウって言う度に出たり消えたりするの邪魔だな。」


 そう言っているそばからまた消えたし……


「そうだな、でも表示を見る限り設定って項目は無いぜ。」

「無意識で表示する条件をクリアしているのかな?」


 だとすると何だろう?

 口に出して言う事が条件なのかな?


「でもこれ表示された時アレだな、魔法使う時みたいに変な感覚が身体を伝うな。」

「あ、それは思った。何だろう、こう身体の中を水がすうと通る感じ。」


 魔力の流れが有るのかな?

 試しにそれを意識する様にもう一度。


「ウインドウ。」


 するとやはり身体の中を水が流れる感じと共にステータスが出てきた。


「よおし…」


 今度はその流れを止めるように意識しながらもう一度。


「ウインドウ。」


 すると今度は消えずにその場に残った。


「和也、さっき感じた流れを止める様に意識すると消えないよ。」

「本当か?ウインドウ。」

「どう?」

「本当だ。」


 よし、これで目の前で出たり消えたりする問題は解決だな。


「でも、これ毎回意識するの面倒だな。」

「そこは慣れるまで繰り返すしかないよ。」

「そうだな。」


 そう納得しもう一度ウインドウを開き今度は自分のステータスを確認する。


「HP98600、MP67500、キャラレベルが1で職業レベルが……おぉ、ここに来る前のままで53だ。」

「ちょ、おま、廃人をもうそんなに上げてたのかよ。」

「まぁ、ね。」

「おかしいだろ、常考。」

「そう言うお前のステータスは?」

「HP67800、MP49200、レベルは同じく1だけど職業レベルは98のままだ。」

「もう少しでMAXじゃん。」

「それでもお前に追いつかないってどんだけだよ。」


 本当それなと思った。

 因みに職業『神』のレベルMAXのステータスでもHPは150000程度で止まる。

 それを考えるとこの職業はまだ伸びしろが有り、1回のレベルアップでステイタス値は約5000程伸びる、まったく恐ろしい公式チート職業だと実感した。


「さてスキルの確認でもしますか。」

「そうしますか。」


 ステータスのスキルの項目をタッチするとスキル欄が出てきた。


「なになに……ここも変わって無いみたいだな。」

「そうだね、オートスキルもちゃんと発動しているみたいだし。」

「因みにお前のスキル何あんの?」

「えーと……オートスキルで常時状態異常回復LV5、常時体力回復LV9、体力向上LV7、筋力向上LV7、俊敏向上LV7、それと無詠唱と空中浮遊、まだまだ有るけど言うの疲れるから次。」

「無詠唱が有るって……」


 よくラノベで詠唱の長さが魔法の強さみたいに書かれているがライフでも同じく詠唱の長さで与えるダメージが大きくなる。

 だから本来、魔術師メイジは後方で詠唱をし、前方は剣士等でカバー。詠唱が終われば魔法を放つってのが定石。

 しかし無詠唱はゲーム内だと唱えたい呪文を選択肢した途端発動する、となんともメイジは喉から手が出る程欲しいスキルなのだが習得出来るジョブは上級職業の1部か最上級職業しかない訳で大半が諦めてしまう。


「それは置いておいて、普通のスキルは瞬間体力向上LVMAX、瞬間筋力向上LVMAX、魔力回復LVMAX、リバースに敵探索LVMAX、ダウジングLV7とこっちもまだまだ有るけど面倒いで省略。」

「本当チートだな。」


 うん、使っている本人が1番それをかんじてるよ。


「和也は?」

「俺か?俺は魔法剣士だからそれに合わせてスキル習得したからお前なら言わなくても分かるだろ?」

「あー、平均的に習得したのね。」


 スキルの習得は本来ジョブ毎に上限が決まっており、大抵がどのスキルを習得するかとか、どのスキルにポイントを割り振るかを考えるのだけど、廃人はレベルアップで得られるスキルポイントも異常で大抵のスキルは習得出来、尚且つスキルの習得上限が無い。

 ……これ職業レベルMAXになったらどうなるんだろう。




 その後もあれこれと確認をし、武装はゲームキャラが持っていた武装そもままってのが分かったが持ち物が全て消えていた、もちろんお金もだ。

 その事に絶望していると。


「さて確認はこれまでにしてこれからどうする?」


 と和也がいってきた。


「……そうだね、まずはここがどこだか分からないからそれを調べる事にしようか。」

「そうすっか。」


 と今後の方針が決まったその時。


 カサカサ……


 背後から物音がした。

 すぐさま振り返るとそこには猪の形をしたモンスターがいたのだった。

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