廃人がゲーム世界の勇者になっちゃいました

ユウやん

第1話 ゲームの中に入っちゃたみたいです

和也かずやこれを見ろ!」

「うおおおお!!友崎ともさき、お前ついに、ついにその職業ジョブに成ったのか!」


 俺達はバイトの休憩中とあるゲームの話で盛り上がっていた。

 今、PCオンラインゲーム界で人気のRPGゲーム『ライフ』

 世界観は中世のヨーロッパをモデルにしており、建物もレンガ造りで王道と言ってもいい。

 物語は多種多様に分岐した選択肢が有り、国王に成ったり勇者に成ったり、はたまた魔王に成ったりと多くのエンディングが有り周回プレイも可能。その際前回のプレイで獲得した装備やアイテムは初期化されるが課金アイテム、課金装備は引き継ぎされ前回の習得した職業や職業レベルも引き継ぎされる。

 ゲーム内で出来る事も多く、畑を造り農作業が可能だったり、ショップを開きアクセサリーを作り販売したりと現実で出来る事ほぼ全てがゲーム内で出来ると色々と凄い。

 更に全NPCや敵モンスターには人工知能が搭載されており街のNPCに話しかける時はチャット機能を使い返答も普通に会話しているかの様な内容だったり、モンスターは群れで連携を取りこちらを殺しに来る。

 他にも凄い機能があるが挙げると限りがない。


「苦労したぜ。攻略サイトでも幻と噂され、SNSでは運営が資金調達の為に流したデマとまで言われた職業だからな。」

「まじで存在したんだな伝説の職業『廃人』は。」


 そして今、ゲーム内のフレンドで有り現実の世界で親友の和也に自慢した職業『廃人』は習得条件が異常で、全職業の習得とレベルMAX、プレイ時間が500時間超え、特定の課金武器を含む全武器(イベント課金武器は除く)の習得、全クエストの全難易度のSランククリア、ゲーム内で起きる全イベントを見るetc..

 と、本気で人生の廃人レベルの条件が付けられており、この情報が公式から発表が有った当時はネットで公式の暴走や公式がやらかしたやこのジョブ習得した奴はニート確定などと盛大に叩かれた。

 しかしその職業に付いているスキルはどれもぶっ壊れ性能で、職業よって決められている装備可能武器は全て装備可能、確認されている職業の中で三大最強職業の魔王や勇者や神ですら到底及ぶ事の無いHPとMP。

 そんな性能だから公式公認チートや人生の終着点と言われ放題だった。


「取り敢えずおめでとうと言わせてくれ。」

「おう、ありがとうな。」

「よっしゃ、そんじゃさっさとバイト終わらせてお前の家でその壊れ性能の鑑賞といこうか。」

「良いけどPCどうすんの?」

「お前の家にはPC二台有るだろ、片方使わせろよ。」

「分かった、けど良いのか?自分に合ったマウスやキーボードでなくて。」

「どうせ簡単なクエ行く予定だから平気だろ。」

「了解。」


 そんなこんなで休憩時間が終わり仕事に戻った。




 バイトが終わり和也と家に帰る。

 家に着くなりPCを起動しゲームを開く。

 今はオフラインで一人用のワールドで自分が育てたキャラが操作待をしている。

 和也もゲームの起動が終わったらしく二人同時にオンラインのワールドに入った。


「スゲー、まじでジョブが廃人に成っている。」


 関心の声が和也から聞こえた。


「で、何のクエストやる?」

「それならAランクの討伐クエ行こうぜ。」

「んー、じゃあこの巨大ゴーレムの討伐にするか。」

「まじか、それ苦手なんだよな。魔法は効かないし固いしでやってるとダレルんだよな。」

「良いじゃん行こうよ。」


 と話しているとPCの画面内のキャラの動きがおかしくなった。


「あれ?ラグか?」

「そんな筈は無いよ。自慢じゃ無いけど家のPCの環境は最高のにしてあるからラグなんておきるはずないし。」

「じゃあこれなんだよ。」


 そう言いながらキーボードを操作しているが全く画面が動かない。

 まさかフリーズかと焦っていると画面が眩しい程の光を放ち始めた。


「うわ!?」

「なんだよこれ!?」


 その光から逃げる様に視線を逸らした瞬間目の前が真っ暗になり意識が飛んだ……




「……んっ…」


 心地よい風が優しく髪を撫でる感触で目を覚ました。


「……あれ?いつの間に寝てたのかな?」


 変な体制で寝てたのかあっちこっち痛い身体を起こし辺りを見回して絶句した。


「へ?ここ何処?」


 周りには木が生い茂り暖かい零れ日が差し込んでいる。

 何処から見ても森の中だ。


「んー……もう食べれねーよ……」


 ベタな寝言が聞こえそちらを見ると和也が同じく寝ていた。

 急いで和也に近寄り揺さぶり起こす。


「おい起きろ!」

「後5分だ…け…」

「それ起きないヤツ!いいから起きろ!」

「んだようるせーな……」

「周りを見ろよ!俺達は家に居たのに今は森の中だ!」

「それがどうした?夢の中なら何が起きても当然だ……」

「夢じゃ無いんだ。頬を抓ったら凄く痛かったし。」

「ははは、まさかー。」

「それにだ、お前と同じ夢を見ている時点でおかしいだろ。」

「それはそうだけど……」


 などと言い合っているとふと違和感に気づいた。


「和也……その服。」

「ん?って、うぉ!」


 それは見た事の有る服だった。

 そう、ライフのコスチュームで魔法剣士だけが装備出来る最高級装備だ。しかもそれは和也が好んで使っている装備で、胸元には自分が考えて作ったシンボルが付いている。


「和也、いつからコスプレをするように……」

「待て待て。流石に俺はコスプレしねーよ。それにさっきまでお前の家に普通の服でゲームしてただろ。」

「だよな。」

「て事は……」

「これって……」


 そこまで言って二人同時に同じ考えに至った。


「「ゲームの世界に来たのかーーー!!」」


 二人で盛大に歓喜の叫びをあげたのだった。

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