第3話 おかしくなる友人

不気味な事があった日から2週間、体調の優れない日が続いていた。

動けないほど痛む、熱が上がるという事ではないが、明らかに元気なときとは違う。

あの晩玄関に落ちたはずの御札は綺麗さっぱり姿を消しただ体調不良だけが残った。


親には一人暮らしと新しい仕事の精神的な疲れではないか、と言われ自分でも納得していたが一向に体調が改善する気配が無い。

不気味な音はあれ以来聞こえる事はなく、あの出来事は熱のせいだという結論になっていたがこの体調不良だけは説明がつかなかった。


しかし年を越した1月の半ば、突如体調不良が完治した。

当初はようやく精神的な疲れも取れたかと喜んでいた。



しかしこのすぐ後に事件が起こる。



ある日の午後、携帯電話に最寄の警察署の警官を名乗る人物から連絡が入る。

何事かと驚いていると、同居している友人が近所の住人と揉め事を起こしたと言う。

会社に事情を話し早退させて貰い警察署へ急ぐ。

警察署の窓口で話しをしているとすぐに個室に通されその日あったことの顛末を教えてくれた。


以下は警察、友人両方から聞いた事をまとめて書く。


その日友人は仕事が休みで部屋の掃除をしていた。

基本的に北の路地に面する部屋で寝ている友人は、以前から夜間に車を窓のすぐ横に止めて話をする人物に腹を立てていたのだが、たまたまその日同じ車が止まっていたという。

勿論道路なので駐車禁止なのだが、そこは田舎・・・ひとりだけではなく近所の人間も勝手に止めて無法地帯と化していた。

酷いときで玄関前まで車が止められていた事に腹を立てた友人は、持ち主が帰ってきた時に注意をし口論になった。

相手側が先に友人を突き飛ばし、友人がやり返し相手を殴ってしまった。

相手の怪我はたいした事もなく、結局この件は揉めることなく解決した。


彼は人に対して喧嘩を吹っかけるような人物でもなければ、手を出すような人間でもない。

付き合いは10代前半からになるが、一度もそんな事はなかった。


そして件の揉め事から3日後、友人は唐突に会社を辞めて帰ってきた。

理由も言わず、ただ辞めたかったから辞めたと言うだけだった。

家賃や生活費を折半していたため、勝手に辞められては困ると言う話をすると友人も理解してくれすぐに仕事を探すと言う。

だがこれ以降、友人は人が変った様に短気になり定職に就けなくなった。

最寄の職業安定所からは断られ、派遣会社に登録するもすぐに仕事をサボり担当者と大喧嘩をする。

車に乗れば周りのドライバーに当り散らし、まともに会話できるのは自分だけになってしまった。


ある日、それを見かねた友人の両親が連れて帰ると迎えに来た。

友人の荷物は置いていくから家賃半分は出すと言い残し帰っていった。


友人が揉めた一件以降、家の傍に車が止められることはなかったが近所からは村八分の様な扱いをされていた。

多少は挨拶を返してくれるようになっていた周りの住民もあの日以降は一切挨拶も無く、ヒソヒソとワザとらしく家の前で指を指してなにやら話すようになった。

困る事は何もなかったが、あまり気持ちのいいものではない。

それからは挨拶もすることなく、いないものとして扱うようになった。


そして友人がいなくなったわずか2ヶ月後、私はまたしても謎の体調不良に襲われることになる。

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