里帰り④

「そこに並べ莫迦共、お前もだメア。正座はせんで良いぞパラシュ、脚の形が崩れるからな」


そう言われて膝を抱えて座ったパラシュに対して、反省する気が無いミョルニルは片膝を立てて座っている。

更にメアに至ってはあぐらをかいてそっぽを向き、ずっとヒュプノスを睨みつけている。


二人に電気を流して体を動かし、きちんと座らせてから話を始める。


「まずはメア、おぬしの力だと思っておったが違うようだな。私と共に行動する者の様子が可笑しくなった、心当たりは無いか」


「私はこれからしようと歩いてて迷っただけだし。何より心に干渉はしない主義だって分かってるじゃん?」


「そうだな、だから心当たりは無いかと聞いておる」


「無いない、私過激派とは絡みたくないし。皆で楽しくやっていきたいじゃん? でも心当たりが有るとしたら……ポベートールだ! 絶対それしかないっしょ!」


メアの言うポベートールとはヒュプノスの家族で、悪夢を生み出す神として君臨している。

離れて空を見ているヒュプノスに聞こえてないか一瞥して確かめるが、幸いにもこの会話は届いていなかった。


安堵して話を続けようとすると、ヒュプノスが勢い良く反対側の茂みに振り向く。

その視線の先を追ってみると、傷だらけのクライネが倒れるところだった。


「何故ここにクライネが」


「トールそれに近付……」


クライネに駆け寄りメアが叫んだと思うと、振り返った途端に背中に衝撃が走る。

口から出た血が踏み込んで来ていたメアの顔に飛び、いつの間にか起き上がっていたクライネを鎌で狙う。


「おぬしは……ヘラ、じゃと。雷霆か……それ程まで、私を殺したかったのか」


「そう、邪魔だもの。まさか雷霆の使用を認めてくれるなんて思わなかったけど、そこまでして邪魔と言われた貴方も呆気ないのね」


不敵な笑みを浮かべたクライネが崩れて、下からヘラが顔を表す。

ゼウスが使う最強と名高く、その威力を世に示した雷霆が体から離れると、飽和した電気が体を駆け巡る。


「おぬしらは勘違いしておらぬか、ゼウス如きが王を名乗るなど笑止千万。その称号が許されるのは……ガイアだけだ」


「トールを助けるよ、ミョルニルちゃんとパラシュちんはヘラを。ヒュプノスはトールを眠らせて命を凍結させて、さぁさぁ逃げるよー!」


ヒュプノスの力によって眠らされ、ヘラが雷霆を振るって追撃を仕掛けるのを最後に、全ての感覚が遮断される。


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