里帰り⑤

瞼を開くと、アリスが私の顔を覗き込んでいた。


「アイネ!」


アリスに突然抱きしめられて視界が塞がれるが、軽いアリスを上半身に引っ付けたまま起き上がる。

上半身にしがみついて離れないアリスを引き剥がし、膝の上に座らせる。


だが座らせた途端に抱きつこうとする為、腕を使ってそれを防ぐ。


「アイネ!」


「何じゃアリス」


「アイネだ! 返事した」


「そりゃ呼ばれればな」


アイネだと万歳をしたアリスに今度はこちらから抱きつくと、後ろに倒れたアリスに顔を押される。


「アイネ痛い」


「すまぬ、ならば離すぞ」


アリスを離して体を起こすと、次はアリスが上半身に引っ付いてくる。


「どっちなのだ、離れるのかくっ付くのか」


「あの……楽しそうな所申し訳ないのですが、お父様が呼んでます」


顔を覗かせたメルトが微笑して下がると、パラシュが姿を現す。


「君が無事で良かった、僕は君の武器として失格だな。守る事が出来なくて済まない」


「何を言うか、失格も何もないであろう。私だって不用意に行動し過ぎた、こちらこそおぬしという素晴らしい武器に釣り合わぬ持ち主で済まぬな」


頭を下げていたパラシュの頭を撫でると、手を止められて押し戻される。


「僕を子ども扱いすると言うなら許さないよ」


「しておらぬぞ、今出来るのはこれくらいしかないからな。御礼じゃよ、守ってくれてありがとうな」


「言葉だけで良いんだ、でも折角だから好意は貰っておく。さぁ、僕を存分に愛でるんだ」


膝の上に座ったパラシュの頭を撫でていると、自身を持ったミョルニルが降ってくる。


「抜け駆け許さんこの腐れビッチ!」


「すぐに暴力に走るでない小さいの」


ミョルニルを片手で止めて投げ捨て、パラシュを抱き寄せて体で隠す。

着地したミョルニルは唇を噛み、涙目でパラシュを睨み付ける。


「私がヘラに決定打を与えたんでしょ、ならその座は私が居るはずの場所じゃない」


「だが主人を守り抜いたのは僕だ、君はその援護役としてヘラを叩いただけだ。本当の意味での……」


「ミョルニルも来れば良かろう、半分空けてくれぬかパラシュ。どちらも欠けては成しえぬものであったろ」


「それもそうだな、ならば僕はこれで失礼するよ」


パラシュが消えるとミョルニルも姿を消して、褒美と言う名の謎の行為をせずに反応が無くなる。

用済みとなった私は、どこか分からない所でメルトの父に呼ばれていると言うなら、面倒を見てもらった為行かねばならない。


少し重たい体を動かして部屋から出ると、アリスが後ろにぴったりと張り付く。


「どうした」


「私も行く」


「それは構わんと思うが、ここは家にしては大き過ぎぬか?」


「うん、家じゃなくてお城だもん」


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